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◆◆◆◆舶用炉(原子力機関)
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<◆◆艦艇メカニズム
<◆海軍
兵器FAQ目次


(画像掲示板より引用)


 【link】

「佐久間のりおホームページ」◆米国の原子力軍艦の安全性に関するファクト・シートの概要
>海軍の原子炉の設計
 元ソースは日本外務省

中国原子力発電フォーラム


 【質問】
 軍艦用の原子炉についてまとまった本て良いの無いですかね?

岩見浩造 ◆Pazz3kzZyM :軍事板,2011/07/17(日)

 【回答】
 「潜水艦その回顧と展望」に,原潜の事故の記述が少しあるでお.
 原子炉の内部写真は,さすがにないなあ.

 古い本だけど,古いからこそ,最近の本では出てこない資料での解説が出てくる.

 ソ連サイドの話だと,市川浩「冷戦と科学技術」があるな.
 科学というか冷戦初期の軍事技術開発の本で,確か原潜も扱っていたような…と思ってぐぐったら,
「第3章 舶用原子力機関開発の最初期とその問題点」
だと.
 高価な本なので,原潜だけなら図書館推奨.

 「ソ連/ロシア原潜建造史」は,動力関係にはあまり重きをおいてなかったかな.

軍事板,2011/07/17(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 舶用原子炉の必要条件は?

 【回答】
 安藤良夫によれば,以下の4つだという.
1) 小型であること
2) 軽量であること
3) 動揺などに対して優れた性能を持つこと
4) 負荷変動に対して優れた性能を持つこと

 【参考ページ】
『原子力船「むつ」』(安藤良夫著,ERC出版,1996.8.2),p.27-28

【ぐんじさんぎょう】,2011/02/10 21:10
を加筆改修


 【質問】
 舶用炉と原発用の原子炉との違いは?

 【回答】
 専門に走ると,我々のような実務専門の人間が詰めるようなお話になりますので,どこまでやってもきりがありませんが,FAQの範囲では特に以下の点に留意すればまず大丈夫かと.

 1.発電用原子炉の場合では通常は100%出力で運転されるが,船舶の場合では当然ですが常に全速前進はあり得ない.そのために頻繁な出力変動にも対応できることが重要であり,特に原子炉周りでは工夫が必要である.
(他には蒸気タービンも同様だが,こちらの技術的課題は比較的容易.)

 2.船舶のため,万が一の衝突時,沈没時にも原子炉周りの安全性が担保される必要がある.
 そのための設計強度の問題や,沈没時に適切に水圧を逃がす特殊な構造が必要.
 また,原子炉周りの安全の場合,上記指摘のようにケミカルシムによる反応度制御(補助に使う分にはかまわないが,使った場合その分の考慮が当然必要)ではなく,制御棒だけで確実にかつ十分に原子炉を冷温停止できる必要があり,原子炉炉心の除熱も考慮しなければならない.

 3.船舶のため当然,揺れを考える必要がある.
 これは原子炉周りにて特に顕著であり,船体の動揺時にも原子炉出力が大きく変動しないよう,配慮他が必要である.

 まとめると以上でしょうか.
 「むつ」の場合,基本的に既存の商業発電用PWRの延長線上にある設計のため,上記以外の点で違いを見いだすのは専門家以外では困難と考えます.

 また,軍事用舶用炉の場合,核燃料交換作業をできる限り避けるために特殊な設計を施すことになりますが,こちらは内容が非常に高度(原子炉の炉心解析が理解できる能力が必要)となる上に,軍事機密の山となりますので情報は極端に少ないのが現状(当たり前ですが).
 いろいろ当たってはいますが,米海軍でもこの点にふれたのはfact sheetなどでもまず見あたらず,米軍艦艇のメンテナンスを行っている日本人従業員でも,原子炉区画には接近できないと聞いているため,まず情報は入手できないものと愚考します.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2009年04月04日 22:44


 【質問】
(30ノットの高速を支える軍艦用の高出力原子炉の核燃料は,民生原発用の核燃料なんかとは全く別次元のレベルで,核兵器に近い濃縮度のウランを使うと言われている,
 だからあんな小さなサイズであれだけの出力を出せる訳だ)
というのは本当か?

 【回答】
 あんな小さなサイズと言われても,実際に米国原子力空母の原子炉がどれほどの大きさなのか,公表されていないため,上記の書き込みはその点を理解している物とは考えられない.
 また,上記の書き込みは専門従事者の目から判断すると,原子力技術(特に原子炉物理学・熱水力学,原子炉の運転)を理解しているものとは到底認められない.
 軍用舶用炉の場合,民生用原子力発電所と比較して,以下の特性を考えなくてはならない.

1.舶用炉の特性として,通常の原子力発電所のように常にフルパワーで運転を継続する訳では絶対にない.
 これは原子力空母が出航後,帰港するまで常時30ノットもの全速力で航行し続ける訳ではないことからも明らかである.
(原子力空母としては不可能ではないが,そのような航行を続ければ,護衛のイージス艦などがすぐさま燃料切れを起こしてしまう.)

2.逆に,特に軍用舶用炉では艦隊行動を行うために,煩雑な出力変更を要求される.
 これは原子炉及び核燃料にとって,熱出力が大きく変化することを意味し,それによって各部材料の熱応力や出力変化による影響などの負荷が加わることとなる.
 よって,常に全力運転で安定させる民生用原子力発電所に比べ,原子炉や核燃料に対する要求事項は,小型化や高出力化よりも,頻繁,場合によっては急激な出力変化要求に対応できるよう,より余裕を持たせる必要がある.
 通常は定格出力よりも低い出力で運用するから,余裕があるだろう,等と甘い考え方をする人間は,少なくとも技術詳細を理解している専門従事者では誰もいない.
 もしいるとすれば,それは技術詳細を真に理解していない証拠である.

3.そのため同出力レベルであるならば,軍用舶用炉より民生用原子力発電所の原子炉(原子炉容器及び燃料集合体)の方が運用上の要求が緩いため,小型化・高性能化した物を組み込むことが出来る.

4.また「全く別次元のレベルで核兵器に近い濃縮度のウランを使う」とあるが,これは小型化要求への対処
(原子炉がある一定以下で小型になると,他は同一条件でも原子炉炉心から漏れ出す中性子の量が増加するため,核燃料であるウランの濃縮度を上げなければならなくなる.
 これは専門外の方にはよく知られていないが,原子炉物理学を学んだ人間にとっては基礎中の基礎である.)
もさることながら,核燃料の交換サイクルを出来る限り長期化する
(次世代フォード級に搭載予定のA1B原子炉では,船体寿命である50年交換不要をうたっている)
事にもリンクしている.

5.しかし,米国原子力空母で採用されている核燃料のウラン濃縮度は,初期のエンタープライズ級では93%であったが,最近では20-25%前後と言われており,他諸国の軍用舶用炉でもほぼ同等の数字と言われている.
(ただし,詳細は軍事秘密扱い.)

 これは第一に,原子炉の物理的な小型化対応に必要なウラン濃縮度増加より,それだけの長期間,核燃料を燃やしきる技術,及び物理的なウラン装荷量の増加
(原子炉内に組み込まれたウランの物理的な総量の増加;基本的には特殊設計によるウラン個数密度増加が寄与する.)
が確立されたことの方が大きく,一見矛盾するようであるがウラン濃縮度の低減と,核燃料寿命延伸を両立させている.
(なお,これらウラン濃縮度低下技術は,日本国内の研究用原子炉でも取り入れられており,海外でも初期の高濃縮ウラン(90%前後)からの低濃縮化(20%未満)への転換にも用いられている,専門従事者にとっては公知の技術・ノウハウでもある.)

6.また,3年から5年ほどで原子炉内の核燃料が全て入れ替わる民生用原子力発電所に比べ,A1B原子炉では50年もの間,核燃料を交換しないと言うことは,それだけの核燃料に対して極めて高い信頼性
(特に核燃料からの核分裂生成物(FP)の漏えい防止)
が要求されることとなる.
 すると,当然の帰結として,最大限経済的に運用することを追求して設計される,民生用原子力発電所用核燃料(燃料集合体)と比較して,50年運用及び頻繁な出力変化対応に十分耐えうるだけの,極めて頑丈で信頼性の高い核燃料(専門従事者の間ではrobust fuel)にする必要がある.
 そのためには技術的な革新もさることながら,経済性より信頼性を優先させた余裕のある設計が要求されることは自明である.

 以上より,軍用舶用炉では
「高濃縮ウランを利用しているから,小型の原子炉で高出力を出せる」
との書き込みは,全くの失当であることが指摘できる.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi別館」
2010年05月09日 04:40〜04:42

青文字:加筆改修部分


 【質問】
>小型化しても相対的にコストが下がりにくい原子力推進機器が早晩ネックになる

原子炉だけでは無くジェットエンジン等でも
大型化すればエネルギー効率が高まったりする事は往々にして有るので
良く大型化がされていますけれど,それでもエネルギー効率は兎も角としても
小型化によってコストは下がると思うのですが

下がりにくいって言ってもそんなに問題視される程に
まったくもって他の機関とは違う程に原子力機関はコストが下がりにくいのでしょうか?

中の人 in mixi,2010年10月30日 10:20

 【回答】
> 原子炉だけでは無くジェットエンジン等でも
> 大型化すればエネルギー効率が高まったりする事は往々にして有るので
> 良く大型化がされていますけれど,それでもエネルギー効率は兎も角としても
> 小型化によってコストは下がると思うのですが

 基本的に原子力機関は「汽力(蒸気タービン)機関」の一種です.
 この場合,エネルギー効率(本来は熱効率)は基本的に蒸気条件(発生蒸気の温度・圧力)で決まります.
 そして,原子力潜水艦に搭載されるような軽水炉(正確にはPWR)の場合,核燃料の安全性担保(事故時の出力抑制・冷却が決定因子です)の上から,蒸気条件は大型化しても,さほど変えることは出来ません.

 最終的には,蒸気タービン側の効率向上(タービン翼の最適化設計)で,原子力機関の熱効率向上を図っているのですが,この点については大型化した場合その裕度は高くなりますが,抜本的に異なるわけではありません.
 つまり,原子力機関に限って言えば,自家消費動力の面を除いて熱効率に関してはスケールメリットはほとんど無い
(皆無とは言わないし,その僅かな世界でも総計としては無視できないため,多大な努力が払われますが.)
と言えます.

 なお,舶用炉の場合,陸上の発電用原子炉に比べて運用条件が厳しい

<例:発電用原子炉では基本的にフルパワー維持だが,舶用炉の場合,船舶において常に全速前進があり得ないように,出力の増減要求が極めて厳しくなる.
 そのため,全力運転に特化した設計が可能な発電用原子炉に比べ,頻繁な出力変化に対応した設計を行わなければならないため,その余裕をひねり出す必要があり,結果として蒸気条件,つまり熱効率は低下することになる.>

ため,熱効率は落ちますし,小型化しても機関のコストとしては更に下がりにくいことになります.


> 下がりにくいって言ってもそんなに問題視される程に
> まったくもって他の機関とは違う程に原子力機関はコストが下がりにくいのでしょうか?

 以上の疑問は,原子力機関の何が一番難しいのか,何が複雑でコストアップになっているのか,ご存じないためと推察します.

 ぶっちゃけたお話し,汽力機関の場合,熱効率を一定に維持できるのであれば,スケールメリットはメンテナンス費用以外には,さほど大きく現れることはありません.
 これは火力発電所において,大規模発電所でも,中小規模の発電所においても発電コストは燃料費と熱効率に大きく依存し,その出力規模には余り依存しない傾向にあります.
<もちろん小型の物2つも3つも必要なところ,大型の物1つで済むことに依るコストメリットは当然あります.ただし,それは本体の設備費用より,主にメンテナンスコストの部分であり,火力発電所のコストは燃料費と熱効率に大きく依存するため,それが表に現れにくいだけです.>

 ただ,原子力機関が従来機関に対して「全く異質」なのは,
極論,他の従来機関がその動力機関として必要不可欠な部分だけ,つまり運転時に必要な部分だけ有れば(財産保護の観点から最小限必要な機器を除き)十分に稼働できるのに対し,
原子力機関(いわゆる動力炉レベル以上の物)の場合,
「発電等には直接寄与しないが,異常・事故の未然防止や事故時に必要不可欠となる【非常用安全系:緊急炉心冷却系(ECCS)が典型例】が,動力炉レベル以上なら出力の如何に関わらず必要となってくる」
ことが,その最大要素としてあげられます.

 コストの具体例を挙げるのは商業秘密に係るため避けますが,原子力発電所の操作パネルの約半分が,発電とは直接関係ないが,万が一の異常・事故時のために常時待機が必要な非常用安全系で占められている現実があります.
 そのため,原子炉(原子力機関)を小型化しても,非常用安全系の必要性は下がりません.
 よって,設計上の余程の工夫がない限り,その簡略化も難しい
(基本的には抜本的な構造変更無き限り許されない.
 :多重化・冗長性・信頼性確保など極めて要求が厳しいのです.)
ために,小型化して確かに原子炉本体や蒸気タービン等のコストは下がりますが,非常用安全系のコストはなかなか下がらず,頭打ちとなりやすいというわけです.

 ぶっちゃけたお話し,原子炉を小型化したので,安全率もその分削りました,なんて馬鹿げたお話しが通用するはずがない,という当たり前のお話しというわけです.

 逆に言えば,原子炉を大型化する方はその非常用安全系の各種容量を大きくすれば良いだけであり,その制御系などのコストアップ要因は少ないため,出力あたりの建設費がその分だけ割安になるわけです.
 よって,商業用原子力発電所の場合,立地難もありますが,その時々の技術水準に併せ,大出力化の道をたどってきたわけであり,それにより発電コストを大幅に引き下げることに成功してきたわけです.

 そのため,舶用炉(舶用原子力推進機関)の場合でも全く同じ事が言えるわけであり,小型化すればそのまま比例計算的にコストが下がるなどと言う,甘い機関では全くなく,コスト低下が頭打ちになりやすいと言えます.


【参考】
 上記の通り,コストメリットから言えば原子力機関では大型炉の方が断然有利です.
 なお,だからといって小型発電炉や舶用炉の設計者が手をこまねいているわけではありません.
 例えば小型炉の場合,大型炉では大型ポンプが必須だった物が,工夫を凝らせば,重力落下注入式の水タンクの設置で間に合ったり,と抜本的な発想の転換を行えば,その分だけコストダウンの余地が生まれる形になります.

 ただし,当然ながらそれには各種技術の新規開発,有効性実証が必須であり,設計・安全解析者の腕の見せ所といった,技術力が厳しく問われる一面と言えます.
 つまり大型炉に比べ,コストが過大とならないような技術力の有無が,小型炉の成立性を左右するわけであって,小型炉だから簡単

<製作だけは物理的に簡単になるように見えますが,舶用炉の場合,その運用条件の厳しさに加え,RCOH間隔の最大限の延長と言った高信頼性要求がありますので,発電用大型炉に比べて却って難しいとすら言えます.>

という甘い物では全くありません.

 逆の言い方をすれば,軍用舶用炉はその高いコストを払ってでも,それに代え難い価値(例えば原子力潜水艦の潜行時間制限の撤廃など)があるからこそ採用されているわけです.
 そして,米ソ海軍がかつて整備した原子力ミサイル巡洋艦などがRCOHを繰り返さずに次々と退役していったのは,いくら軍用とは言え,従来機関に比べてそのコストに見合ったメリットを見いだせなかったためとも言えます.


 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2010年11月07日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 なぜ沸騰水型炉は舶用炉に使われることが少ないのですか?

 【回答】
 沸騰水型炉は炉内の一次冷却水に,あまり圧力をかけず沸騰させ,水蒸気になった一次水で直接タービンを回転させる方式である.
 この方法では蒸気発生器など特別な機器を必要としないため,加圧水型に比べて小型化できるが,一次水を直接利用するため,放射線の遮蔽を広範囲にわたって行わねばならず,結局重量が増加してしまう.
 また,艦船に搭載する場合,船舶の動揺によって出力の制御が難しいという.

 【参考ページ】
『大図解 世界の潜水艦』(坂本明著,グリーンアロー出版社,1994.4.1),p.69

【ぐんじさんぎょう】,2010/02/23 23:00
に加筆改修

> 「また,艦船に搭載する場合,船舶の動揺によって出力の制御が難しいという.」

 この部分は全面削除推奨.
 確かにBWRの場合,船舶が動揺して原子炉内の水位が変動した場合,原子炉の出力は変動しますが,このメカニズムはBWRの内部構造を熟知していなければ理解できないお話しになります.
 また,それ以外の面でも出力変動を起こす要素があり,その点を説明しなければならないのですが,これは原子炉物理学などの原子炉の挙動を理解できなければ習得不能ですので,結果として誤りではありませんが,削除が妥当です.

 PWRの場合でも船舶の動揺により,蒸気発生器内部の水位が変動した場合,原子炉出力もある程度変動します.
 ただ,それが無視できる(押さえ込める)レベルであるのか,効いてくるものであるのかは大きな差であり,動揺(振幅・周期他)にも依りますので,そんなに簡単に言えるものではありません.

 なお,舶用炉の解析プログラムやシミュレーターではこのことを模擬することが必須条件であり,日本の原子力船「むつ」で得られたデータと,各解析プログラムやシミュレーターによる計算結果は良く一致し,その設計評価能力(妥当性)を示しています.
 ただ,こちらも非常に難しいメカニズムを含むものとなりますので,起こりうる事実の指摘としては正しくとも,その大きさ及び影響などの評価は極めて難しい点から,簡単に言ってのけるには問題が大きすぎると考えます.

 以上は,専門従事者である私個人にとってみれば,極めて当たり前のお話しですが,そのことを説明しようとなると,原子炉の挙動を説明する教科書が1冊必要になるほどですので,その点ご理解いただければ幸いです.
 そして,そのことを鑑みれば,先の「世界の艦船(日の丸原潜)」での原子炉周りの説明が如何に底の浅い物であるのか.そのような複雑なメカニズムを正確に理解するだけの能力が有れば,間違いようがないところで,簡単に間違えて平気でいることからも,この点に対する理解が全くないことが指摘できます.

へぼ担当 in mixi,2010年02月21日 23:29


 【質問】
 航空母艦,潜水艦以外で原子力を動力に使うとメリットの大きい艦種ってなんですか?

 【回答】
 あんまり無い.(軍艦,特に戦闘艦の艦種の中では)
 原子力を主機関にするとメンテの問題もさることながら,巡洋艦や駆逐艦に搭載しても空母や原潜並の出力はオーバースペックで持て余す上に,主機関が船体の区画の大部分を占めてしまいかねない.
 燃料補給の心配なく高出力を惜しみなく使えるってのは,どんな用途に使ってもメリットはあるよ.
 まあ,小型化は難しいからある程度のサイズの船であればって条件はつくけど.
(必要なスペックの方に合わせて小型化低出力にするとか手段やアイディアはあるが)

 問題は生涯コスト.
 製作もだが,燃料交換,退役後の原子炉など,金のかかる仕事がいっぱいある.
 そのコストを支払ってでも欲しいという要求があるかどうか.

 原潜はそれ以外の方法では置き換えられないから,コストは高くてもパフォーマンス比が言わば無限大だから採用するしかない.
 空母でも大型艦が高速航行できる上に,自分の燃料の代わりに航空燃料積めるとか,カタパルトの蒸気や電力(今後なら)出し放題とか,パフォーマンスがかなり大きいから採用されてるけど,英仏はコストとのバランスで通常動力になったよね.

 まして,それよりパフォーマンス要求が切実でない分野になると,専用のメンテ施設やら放射性物質の処理まで考えたトータルコストが桁違いに大きいので,「なら要らんわ」になってしまうわけ.
 軍事は常にそうだけど,最高性能のものが一番いいのではなく,予算内で一番使えるものが買う物になる.

 まあ,強いて挙げるなら……

1) 実験艦.
 原子力推進機関の技術実証および問題点の洗い出しを目的とする艦が欲しいときは,原子力を用いないと意味がない.

2) 強襲揚陸艦.
 原子力機関はそのエネルギーを持て余し気味だから,やる事が多い艦種ほどメリットや対費用効果が高い.

3) 大型高速輸送艦
 でかい船体をパワーでごり押しして高速をたたき出す.
 事前集積艦を置く代わりに,あるいは置けない地域に,空輸では不可能な量の兵装,人員,物資をごく短期間に送り込むことができる事には意味がある.

軍事板


 【質問】
 原子力艦から電線を引いて外部に電気を供給することはできますか?
 もしできれば災害派遣とかで役に立つと思って.

 【回答】
 船上の原発から陸上に送電するという計画は,あります.
 1960年代末に,米陸軍がリバティ船改造の洋上原発MH-1Aを建造し,パナマ運河地帯に係留して1975年までの間,陸上への送電を行った例があります.
http://www.atomicinsights.com/nov95/ANPPSum.html

 また,ロシアでは現在,民需用の水上原子力発電所計画が進められており,一番船「Академик Ломоносов」は2007年に進水済み.
 搭載されるのはKLT-40Sという砕氷艦用として実績のある原子炉2基の予定.
 輸出も考えてるそうで,ロシア当局によると興味を示してる国が結構あるとのこと.
http://www.sevmash.ru/?id=2899&lg=en
http://www.vz.ru/news/2007/4/15/77501.html

 なお,ロシアでは,上記計画のデータ取りの為,原子力砕氷艦「Советский Союз」をムルマンスクにつないで陸上への送電をやったそうです.
http://www.jaif.or.jp/ja/data/monthly/0075-2.html

 多くの原子力砕氷艦は電気推進船なので,洋上原発に転用するのも容易なんでしょうね.
 それ以外の原子力軍艦では蒸気タービン推進なんで,発電能力はそんなに期待できないと思います.

◆yoOjLET6cE in 軍事板
青文字:加筆改修部分



 【質問】
 在来型機関の艦船では,発電所の代替を務めることができますか?

 【回答】
 普通は出来ない.

 戦前にサラトガ(CV-3)が,発電所が逝ったサンフランシスコの岸壁に横付けして臨時給電してるが,これはターボエレクトリック(蒸気タービンで発電して電動機で推進する)だから.
 大直径プロペラを低速で回転させた方が,推進効率が良くなるが,減速ギアの設計は面倒なので,戦間期のアメリカでは間に発電機と電動機をかませるターボエレクトリックが流行った.
 戦艦カリフォルニア級2隻,コロラド級3隻,空母レキシントン級2隻がそう.

 減速ギアは青酸上のネックにもなるから,WW2中に大量に作られた護衛駆逐艦の半分も,ディーゼルエレクトリックかターボエレクトリック.

軍事板,2007/07/04(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 原子力空母の動力炉を,発電機代わりに使うなんてことは可能でしょうか?

 【回答】
 可能かどうか,と問われれば,可能.
 ただ,空母の装備としての発電機だけでは,発電所代わりに出来るほどの電力を供給するのは難しいだろう.

 原発の原子炉は発電機を回すためのものであって,発電機そのものじゃない.
 原子力空母も原子炉で沸かした高圧蒸気でタービン回すのは発電所と同じ.
 タービンに発電機をつなげれば発電は出来る.
 ただ,タービンの回転を推進に使うので,発電所のような大規模な発電機を空母は持っていない.

 あと原子力空母は,バックアップ用にディーゼル発電機も積んでいる.
 最新型は航空燃料と燃料を共用出来る,ガスタービン発電機積んでる.

 史実では,アメリカの空母「レキシントン」が,1939年と1940年の冬に電力不足に陥った町「タコマ」に,30日間の電力供給を行っている.
 もっとも,この艦はターボエレクトリック推進(タービンで発電した電気でモーターを回し,それでスクリューを回す)であるため,元々発電能力が他の艦に比べて圧倒的に高いが.



162 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/10/18(土) 19:47:30 ID:???

 まあニミッツ級で6.4万KW程度だから,東京電力と比べると1%ほどしかないけどな.
 まあニミッツ級で6.4万KW程度だから,東京電力と比べると0.1%ほどしかないけどな.

163 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/10/18(土) 19:54:23 ID:???

 東京電力と比べるのは,それはそれでどうよって気もするけどな


164 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/10/18(土) 19:56:35 ID:???

 そうだな,どうせ比べるなら北海道電力か四国電力だよな.


165 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/10/18(土) 20:00:53 ID:???

 沖縄電力と比べると9.2%だな,ニミッツ.

>>162
 首都圏に電力を供給している大井火力発電所の1機の出力が35万kw,3基で105万kw.
 もちろん,首都圏に電力を供給しているのは大井火力だけじゃない.

軍事板
青文字:加筆改修部分

▼> ニミッツ級で6.4万KW程度だから,東京電力と比べると1%ほど

 先生!桁が1つ違います.
 首都圏の電力需要はそんな生やさしいものではありません.
 2008年夏の最大電力(6089万kWe)で計算すると0.1%のオーダーとなり,多少年度による波はありますが,それくらいの桁だと考えていただければ良いかと.

 ただ,いつも思うのですが,SI単位系の接頭辞で10の3乗を示すkiloは小文字のkなのですが,ほとんど全てにわたって大文字のKと誤記され続け,まともに記載されたことがありません.
 単なる理系の戯れ言でしょうが,何故わざわざ小文字にしたのか,kgやkmから説明する必要があるのかと小一時間(略).
<逆に,この段階でまともな記載かどうか,信頼できるかどうか判断できる格好のバロメーターになるのですが.

 ちなみにジョージ・ワシントン横須賀受け入れで建設された施設・設備は,以下のページ参照願います.
> 08.7.27 ヨコスカ平和船団同乗記(1) 原子力空母関連施設を海から見る
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/umi/yokosuka/080727heiwasendan1.html
 このうち,稼働開始が遅れたという火力発電所は以下の写真参照.
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/umi/yokosuka/080727powerstation.jpg

 タグボートの大きさなどから,商用のものと比べ,さして大型の設備ではないことが,外見写真からでもよく分かります.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 『軍事研究』2007年6月号の記事,「検証:原子力艦艇の核燃料交換の実態」には,具体的にどこに問題があるのか?

 【回答】
1.液体金属炉(Liquid Metal Reactor)について

 普通,液体金属炉と言う名称は原子力用語として使いません(学生時代から含めると,かれこれ原子力に17年ほど従事していますが,一度も見聞したことがありません.).
 筆者殿の言及したい内容では,通常「ナトリウム『冷却』炉」もしくは「鉛ビスマス『冷却』炉」のように「冷却」の文字を入れるのが普通です.
 というのは,「液体金属」としてしまうと,「燃料要素も液体」との発想が出てしまい,溶融塩炉という形で実際に燃料が液体(溶融塩)となっている物と,大きな違いがあるにもかかわらず,区別が付かなくなってしまうためです.
 厳密な意味での表現に間違いは有りませんが,通常使われない用語を用いるのは,誤解の元となるため避けるべきと考えます.

 なお,筆者殿は言及されていませんが,アメリカのシー・ウルフでは「ナトリウム『冷却』炉」を,旧ソ連のアルファ級では「鉛ビスマス『冷却』炉」を用いています.
(両者とも一長一短ですが,取り扱いが非常にやっかいなのは両者に共通しています.)

2.「RCOHで3年以上もドックに入っていなければならないのも,炉心の熱が冷めるまで期間をおく必要がある」

 炉心の燃焼度にも依りますが,筆者殿の記載の通り崩壊熱の発生(=未臨界となり,核分裂を停止した炉心が発する熱)は非常に重要なファクターとなり得ます.
 しかし,原子炉を停止した直後から崩壊熱は指数関数的に下がり,商用原子力発電所では1週間もあれば燃料の移動には全く問題ないレベルとなります.
 このような戦闘艦艇には使用済燃料プールがない可能性が高い(ただし詳細は不明)のですが,この場合では特に,冷却は長ければ長いほど発熱が少なくなるため,扱いやすくなり好都合です.

 しかし,これだけの理由のためにオーバーホール期間を長くするのは合理的ではないと考えられます.
 取り出すだけでしたら,発熱が高い場合,一度に取り出す燃料の数を少なくすれば良いだけの話ですし.極端な話,1年は待つとしても,それ以上の期間は発熱量の減衰の程度が非常に鈍るため,それがクリティカルになるとは考えにくいところです.
 もちろん冷却の必要性は言うまでもありません.

 また,先の記載は商用原子力発電所での使用済燃料の搬出などを念頭に置かれているとも思われますが,こちらは使用済燃料プールで十二分に冷却日数をとれるため,一度に運べる体数など経済性を考えての物.
 先述の通り,その方が何かと取り扱いが楽ですが,一刻も早く現役復帰させたい戦闘艦艇にそのまま当てはめるのには,やはり無理があります.

3.「核燃料交換となると,放射性の液体や固体,気体が原子炉から出ることになる」

 確かに核燃料交換でも発生しますが,通常の運転でも原子炉内で放射化された気体や液体は発生しますが.後の文節との関連で「核燃料交換」に限る理由が不明です.

 むしろ通常運航中でも発生(こちらの方が原子炉で日常発生するため,トータルとしては多くなることもありえる)し,その一部は放射能が十分低いレベルにまで処理した上で放出されることもあります.
 そのため,日本国内に原子力潜水艦が寄港した際などは,海上保安庁の放射能モニタリング船が出て,海水のモニタリング作業を行っていますが,このことはご存じないのでしょうか.

 また,「固体」とは使用済燃料のことでしょうか.それともメンテナンスなどで発生した交換部品などのことでしょうか.趣旨が不明です.

4.「切り離し部分には重要な配管などを通さない」

 あまりにも当たり前なことです.原子炉等へのアクセスに於いて,邪魔になるような配管を設ける愚を行う人間は,通常の感覚ならいないと考えます.
 いちいちアクセスするのに分解するならともかく,溶断(切断)など行ってしまえば,その後の復旧は建造以上の手間暇がかかるのは容易に想像が付きます.

 ましてや建造時には放射能など帯びていませんが,オーバーホール時には通常放射能で汚染されているのが普通です.
 このような配管の切断・復旧には大変手間がかかる上,復旧後には欠陥がないか,大変厳重なチェックがあるのが普通です.

 以上考え合わせると,そうしない訳がないと言えるのですが.
 まるで「戦闘艦艇の水密ハッチ部分に貫通するダクトを設けない」並の当たり前の記述であり,蛇足に過ぎるようにも感じます.

5.「核燃料交換のためには,原子炉の格納容器の蓋を開けて,炉心を剥き出しにしなければならない.」

 最も致命的な誤りです.
 まず,筆者殿には原子炉を収納する「原子炉格納容器」と,原子炉そのものと言っていい「原子炉圧力容器」の区別が全く付いていません.
 ここでの文節から見ると,「(原子炉)格納容器」ではなく,「原子炉圧力容器」としなければならないのですが,どのような参考文献を参照になったのでしょうか?

 さらに「炉心をむき出し」にしてしまったら,如何に3年以上冷却していたとしても,発熱で炉心が溶けてしまうか,核燃料の被覆材に用いられている物と推測されるジルコニウムが火災を起こしてしまう恐れがあります.
 また,火災が起こらなかったとしても,使用済燃料の発する非常に強い放射線で,周囲の従業員は致命的な放射線被曝を受けることとなります
 チェルノブイル並みの大惨事を巻き起こしたいのでしょうか.

 一旦動かした原子炉(動力炉クラス)は,炉心から全て核燃料を取り出してしまわない限り「絶対に炉心をむき出しにすることはなく,放射線遮蔽,崩壊熱冷却(除去)のために必ず水を深く張り,その水を常に冷却し続けるのは必須」です.
 対象物や構造を理解していれば,絶対に上のような間違いは起こさないはずですが.この時点で「全く私は理解していません」と宣言されているような物です.

 この点は,次の6.とも合わせると単純ミスではなく,非常に大きな間違いと判断でき,見過ごすことは絶対に出来ません.

6.「剥き出しになった炉心から,核燃料棒を一本一本慎重に引き抜いては,放射線を遮蔽する容器に収めていく.」

 さすがに筆者殿も,使用済燃料が強い放射線を発することは理解されているようですが,すると先ほどの5.とともに「剥き出しになった炉心」から発せられる放射線はどうするおつもりなのでしょうか?
 先に5.でも指摘させていただいたとおり,これらの作業は全て深い水中の中で行わなければなりません.遠隔操作でも「剥き出し」となってしまえば,離れた位置にいる従業員でも致命的な被曝を受けます.

<商用原子力発電所の場合,最低限でも燃料上端から水面まで数メートル以上の水深がないと,作業従事者の被曝が致命的な物となりうるため,それを厳守するよう大変厳重なロックや規則が設けられているのですが.

(「核燃料棒」という表現も大変に引っかかるのですが,これについては公開された物がないため,この点については保留します.
 しかし,通常は燃料集合体単位で取り扱い,「核燃料棒」を一本一本処理するような手間のかかることは行いません.
 また,万が一,一本一本処理するようなら間隔保持等の観点から,臨界安全にも重大な支障が及ぶこととなる(また崩壊熱上でも除熱の問題が生じる)ため,まず持ってあり得ません.)

7.「再処理は意味がない.」

 プルトニウムの回収という意味では,確かに意味がないかも知れません.
 ただし,燃え残りのウランの回収(回収ウランと言います)は重要なファクターです.
 この場合,少なくとも天然ウラン(ウラン235は0.711重量%)より,ウラン235が高い含有率で含まれるウランが回収できるのは確実です.
 また,再処理のコストまで掛けて行うのが得策か否か,天秤に掛ける必要はありますが,ウランの濃縮が大変困難な手間を要すること.また,廃棄するなら廃棄するでウラン235の含有率が高いと,臨界安全など何かと取り扱いがやっかいなことから,そのままというのは勿体なく,かつ面倒な話でもあります.

 さらに別の観点として,使用済燃料の(被覆材の)健全性が問題ともなり得ます.
 そのまま廃棄しても大丈夫なほど,核燃料を覆っている被覆材が健全,かつ超長期にわたってもその健全性が保証できるなら話は楽なのですが,そうは簡単にいかないのが現状です.
(北朝鮮が原子炉から取り出した使用済燃料を再処理したがっていたのも,プルトニウムを抽出したいからだけではなく,かの国のものでは水質管理等の杜撰さもあって被覆材がボロボロであり,自身の安全確保の面からもかなりの脅威であったという,技術的にはある程度納得できる側面もあります.)

 以上より単純にプルトニウムの回収が期待できないから,「再処理は意味がない.」というのは,一つの側面しか見ていない短絡的な考えと言えます.
(もちろん重要なファクターではありますが.)

8.「手順を間違えれば炉心の核燃料が臨界(即発臨界)になって,爆発的にエネルギーを放出」

 筆者殿には「爆発的」のイメージが掴めていないか,それとも旧ソ連の事故で原爆のような「核爆発」が起きたのか,そうでないのか,理解できていないように思えます.

 このような原子炉で即発臨界が起こった場合,最悪の場合でも,間違っても「核爆発」はしません.
 最悪の場合で発生するのは,即発臨界によって核燃料内で大量の熱エネルギーが発生した結果,核燃料が溶融.被覆材を突き破って,原子炉水に溶融状態の核燃料が噴出された結果,「水蒸気爆発」が発生することです.

(臨界事故・反応度事故で検索を掛けて頂ければ,すぐに理解できることです.)

 「爆発的に」との比喩は理解できないこともありませんが,文節では大変に誤解を招く表現となっており,筆者殿の理解も疑われるところでしたので,敢えて言及させていただきました.

9.「(BWRの場合は)制御棒を押し上げる圧力が抜けると,制御棒が自重で滑り落ちてくるのである.」

 恐ろしいことを言わないでください.そのような恐ろしい原子炉だったら,とてもではありませんが設置できませんし,そこら中で大事故が発生しているでしょう.
 実際は,制御棒の駆動機構にツメ(正式名称:ラッチ)がついており,そこでロックされるため,自重で滑り落ちてくるなどと恐ろしい事は発生しません.
 北陸電力志賀1号機等で発生した事故は,圧力バランスが異常に崩れた結果,そのラッチ(ロック)を外す結果となってしまい,ゆっくり制御棒が引き抜けた物です.

 詳細は北陸電力の公開資料
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/07042001.pdf
を参照願います.

 些細な間違いかも知れませんが,筆者殿の理解度が低いと言うことが,これでも推し量られてしまい,非常に残念に思っています.

 以降,「可燃性毒物」の項以降はほとんど手が着けられない有様.以下,主な問題点を列挙すると

10.「とりわけ核燃料の濃縮度の向上のおかげである」

 完全に誤りです.
 米軍の場合,最初期から濃縮度は90%以上のものを用いていたと推測されます.
 それに濃縮度向上に理由を見いだすなら,初期の3-4年から,50年にも核燃料交換間隔が延びようとしているのは,単純計算で濃縮度が十数倍にならなくてはならないのですが,どこにそのような余裕があるのでしょうか.
 この点からも筆者殿の見解は誤りであることは明白です.

 これについては,それらを燃やしきる技術,それに堪えられる燃料各部材の技術開発,及び炉心への核燃料の装荷量を増やす技術等が組み合わさった物と考えるのが妥当,というのが核燃料の専門家としての見方です.

11.「(一般商用発電炉の核燃料は)せいぜい20%くらいの低濃縮ウラン」

 少なくとも西側の軽水炉においては最大で5%です.
 試験的な物にそれ以上の物があることを否定しませんが,一般論で20%は試験研究炉,高速炉
(日本だと常陽:常陽では20%濃縮度のものを用いており,軽水炉の5%限度のものと,無意識的に防備レベルが同じになったことがJCO臨界事故の遠因とも成ったとも指摘されています)
のものでしか使用しません.これも一体何を参照したのでしょうか.
 原子力の反対派でもこのような間違いはしません.

 桁外れの,あまりに酷い間違いと言えます.

12.90%以上濃縮度の高濃縮ウランの使用について

 「兵器級」とも言われるのは事実ですが,旧世代の西側の研究用原子炉では,むしろ「90%以上の高濃縮ウランを使用していたのが普通で,それ以下の濃縮度の物の方が稀」です.
 事実,私個人が扱った経験のある研究用原子炉でも,京都大学炉(KUR),京都大学臨界集合体(KUCA),立教大学炉(RUR)のいずれも,90%以上の高濃縮ウランを使用していました.
(KURのみ20%以下に低濃縮度化)

 扱いを誤ると危険性があるのは事実ですが,設計上,十分な自己制御性を持たせるなど高い安全性を持たせているため,高濃縮ウランだからといって特別の事故が起こったことはありません.

 横須賀への原子力空母配備反対派のように,「ちょっと〜」との記述のように,いたずらに危険性をあおり立てるのは全く感心できません.
 ましてや,その後に「商用発電炉ではせいぜい20%〜」との記述に至っては,これらの炉心設計などの技術・歴史・現状を全く理解していないと断言できます.

13.「日本には潜水艦用の原子炉の設計経験がまったくない」

 筆者殿も言及されている民間用の原子力船(「むつ」)の開発,運用経験等を生かして,引き続き舶用炉について現JAEAでもしっかり研究されており,「深海調査船用原子炉」等も設計,公表されていることをご存じないのでしょうか?

 例として,
------------------------------------------------------------------------
舶用原子炉(MRX,DRX)蒸気発生器伝熱管の簡易流力振動評価
JAERI-Tech 2001-039; Jun.2001,25p.
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAERI-Tech-2001-039.pdf

 大型船舶用原子炉MRX及び深海調査船用原子炉DRXにおいては,蒸気発生器を原子炉容器に内装する一体型構造を採用している.
 蒸気発生器はヘリカルコイル貫流型であり,多数のコイル(伝熱管)が,炉心を内包する原子炉容器内筒を取り巻くようにアニュラー空間内に設置されている.
 この伝熱管の管外流及び管内流により発生すると予想される流力振動を簡易計算により評価し,支持点ピッチの妥当性を検討した.
------------------------------------------------------------------------
など,検索エンジンで研究成果を容易に検索できますが,どうお考えでしょうか.
 断定されるよりも,まず検索された方がよいと考えますが.

 風化云々も,先のことから笑止です.

 まだ,「潜水艦用として最も重要となる静粛性確保について,実機経験がなく,これについてはどこの国でも最高機密に属するため,大変に難しい.」というなら,十分理解できるのですが.

 また,軍事的・技術的な観点とは多少異なりますが,日本が原潜(軍事用原子力推進艦船含む)を独自に設計して建造するのは,
「日米原子力協定」
等から,核物質の軍事転用(核爆発装置(=核兵器)だけではないことに注意)が明確に禁止されているため,各協定を改定しない限り不可能なこと.
 万が一,違反した場合は制裁措置の結果,日本の電力のほぼ4割を占める原子力発電が燃料のウランを入手できないことから,全て停止に追い込まれ,例え化石燃料が通常のまま手に入ったとしても(まずもって「通常のまま」などあり得ませんが),停電により経済に大打撃が与えられるため,極秘裏にでも絶対に不可能なこと.

 以上の大変重要,かつ致命的な点を指摘できないのも,筆者殿のこの分野への理解が深くない傍証と言えます.

 ……等々,細かな点を挙げればきりがありませんが,議論を始めるにあたって最低限の問題提起をしてみました.
 これでどのような回答が返ってくるのか,不謹慎ながらwktk〔わくわく〕しているところです.
 以上,大変長くなりましたが,ご参考まで.
 また,長文の連投,大変失礼しました.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 エンタープライズ,ニミッツの原子力空母の機関配置,大まかには知っているけど図面では見た事無いんだよなぁ・・・

JSF in mixi,2010年04月02日00:47

 【回答】
 極めて常識的に考えれば,原子炉区画の重量(遮蔽等で著しく重いはず)のため,原子炉区画は重心近くに,そしてその蒸気タービンはその後方に存在することが予想されます.
 イメージとしては,原子力船「むつ」などと同じと考えていただければ,それほど大外れではないと考えます.

 一方で,戦闘用船舶であることは変わりありませんので,その詳細が余に明らかになることはないのでは?と考えます.
 ちょうど,民生用原子力発電所であっても,防護上の問題から詳細な配置図は秘密指定になっており,その公表は厳しく制限されています.
 もちろんPR用に大体の図面は示されていますが.

 なお,原子力推進と遮蔽という独特の概念より,ある一定程度の確信を持って,航空燃料の配置も予想されます.
 そのため,ダメコン上でもその脆弱性を示しかねない詳細な図面が,世の中に明らかにされることは考えにくいところですし,原子炉と蒸気タービンをつなぐ蒸気配管も,ある程度の推測は出来ますが,これも上に同じくと言うことで.

 もし,公表されているものがありましたら,ご紹介いただきたいと考えます.
<ただ,市ヶ谷の某編集部でいろいろと尋ねましたし,技術的知見からのサジェスチョンは行いましたが,英文のものを含め,まともに分かるような資料はさすがにないそうです.>

へぼ担当 in mixi,2010年04月02日 01:34


 【質問】
 最新型原子力空母は航空燃料と燃料を共用出来る,ガスタービン発電機積んでる,というのは本当ですか?

 【回答】
 出典が明らかではないのですが,本当に「全て」ガスタービン発電機だったら大した物です.
 米原子力空母が搭載する原子炉が,非常時でも「時間的余裕」でそれだけ持つ,と言うことに他ならないわけですから.

 ちなみに,陸上設置の原子力発電所の設計に当たり,もし非常用電源として,大がかりな冷却系他補機が必要なディーゼル発電機ではなく,メンテナンスも簡単なガスタービン発電機を採用できれば,どれほど楽になるか,と言うところなのですが.

 もっとも,その得失まで理由も含めて承知されている方は,専門家か従事者のみとなりますが.
 詳しい理由は非常に長くなるため省略します.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
「Technobahn」:米国政府,空母・潜水艦以外の海軍艦船にも原子力機関を搭載へ
 CG-Xの原子力搭載への布石なのか・・・

JSF in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 統合電気推進艦となれば,コストも割高ですが現在の時点では馬鹿高い,とまでは行かなくなったため,システムとして原子力というオプションも十分に有効と考えます.
 出力だけ見ればそれらの船でも,もはや小さな商用火力発電所クラス(ガスタービン・コンバインドサイクル1軸分)ですし,オーバーパワーの嫌いもなくはなし.
 ただ,出力的には1基原子炉が有れば十分なのですが,原子炉の特性(再起動が困難他)から,できれば2基欲しいところ.
 まあ,予備に確実に存在するガスタービン,もしくはディーゼルエンジンが有れば十分なのでしょうが,関係者としては気になるところですね(笑).
(私の方のイメージとしてはフランス海軍の原子力潜水艦のように原子力ターボ・エレクトリック推進を,その他ユーティリティ電源含め電力にて統合したもの)

 まあ,さすがに原子力蒸気タービンとボイラー炊き蒸気を直接動力源として共用化する発想は,未完に終わった旧ソビエト(原子力発生蒸気(飽和蒸気)をボイラーにて過熱蒸気にまで高める構想があったとのこと)位でしょう.
 ただ,動力源が全て一旦電力に変換される船では,その発電が原子力蒸気タービン発電機で行われるのか,ガスタービン発電機他で行われるのか,容量は別として推進システムとしては大きな違いと成らないのかも知れません.

 もっとも,原子力機関には非常用の補助動力が不可欠ですので,何らかの形で搭載するのでしょうが,それをどこまで統合するとどう呼べばいいのか,という問題になるのかも知れませんね.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

>ハイブリッド

 帆を張れば燃料は要りませんよ!

ヨシフ in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 オールで漕げば,風が吹かなくても安心ですね!

丼炒飯 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 原子力重油併用機関の艦が,重油ボイラーでブーストするとしたら, やっぱり蒸気発生器みたいな構造で原子炉系と重油系を分離して,重油ボイラーは放射能汚染されないようにするんですかね?
 今ひとつ,飽和蒸気を過熱蒸気にするという過程のイメージが湧かないです.

Tamon in 「軍事板常見問題 mixi支隊」
青文字:加筆改修部分

 【回答】
 局限すれば,システム設計者が原子炉側の蒸気発生器の信頼性をどこまで見込んでいるかで,構造が決定されるものと考えます.

 PWRのような原子炉冷却系が1次系と2次系に分離されているものの場合,本来タービンに回る側である2次系の蒸気が放射能に汚染されることはありません.
 しかし,それは建前のお話しであって,実際には1次系の熱を2次系に伝える蒸気発生器(細管の固まりと考えてもらえば十分です)が,まともに機能していればその通り,2次系はクリーンなのですが,事はそうは簡単ではありません.

 蒸気発生器は細管の固まりであり,2次系の沸騰現象に伴い,細管が振動したり,不純物が持ち込まれた場合,振動止めの金具の間に挟み込んだりしてしまい,1次系と2次系を隔てる細管に傷が付く場合が数多くあり,その解決がPWRにおける最大の技術上の課題と言っても過言ではありません.
 また,メンテナンスでも現在ではようやく検査の自動化が図られましたが,それでも放射線被曝の多い作業の一つです.

 よって,日本国内のPWR原子力発電所のように「潔癖症」のプラントであれば,蒸気発生器細管の傷は見つかり次第,修理することで,1次系から2次系への漏れ(すなわち2次系の放射能汚染を意味する)を許容しませんが,諸外国のプラントであれば,合理的な範囲で漏れを許容する運用を行っています.
 そのため,技術的な常識感覚で言えば,舶用炉の場合,2次系であっても,ある程度の放射能汚染の可能性は避けられないと考えます.
 
<ちなみに,日本国内であれば関西電力美浜原子力発電所のように,蒸気発生器細管の破断事故が起こったら,大事故扱いされて再起動までに多大な時間を要しましたが,舶用炉ではそのような余裕が許容されるか?という問題もあります.
 また,旧ソビエトの技術水準を示す例として,世界の艦船別冊の中でも信頼性が高いと考えられる「ソ連/ロシア原潜建造史(アンドレイ V. ポルトフ著)」の中でも,蒸気発生器のトラブルに悩まされた状況が詳細に記されています.

 すると,次はボイラーのメンテナンスをどこまで考えるか,ボイラーの一部とはいえ放射能汚染を許容するか,許容しないかというステップになります.
 しかし,完璧な蒸気発生器を作成するのは非常に困難である(出来るぐらいなら原子炉側で行い,それ以降の懸念を防ぐのが普通の考え)こと,さらにボイラーと原子炉側2次系(推進用蒸気タービン含む)を切り離すのはシステムが複雑に成りすぎるため,技術的に不可能ではありませんが,得策とは言えません.

 よって,所謂「貫流ボイラー」
(日本国内の現役にある従来型火力発電所はほとんどこのタイプ)
を採用し,重油を燃やす火室の中に蒸気の通る配管を引き回し,原子炉側蒸気発生器による発生蒸気(2次系・飽和蒸気)を過熱蒸気にまでさらに加熱するシステムが真っ先に思い浮かびます.
 そうすれば,万が一の2次系放射能汚染の場合も,よほど下手なことをしない限り,重油ボイラーについては蒸気配管内の汚染のみを考えれば良く,対応及びシステムが合理的なものになります.

 以上は日本国内の技術ベースに考えましたが,一番始めに触れたようにそれらシステムはそのキーコンポーネントの信頼性(この場合,原子炉側蒸気発生器が最大)をどの程度見込み,どのような余裕を持たせた設計にするのか,という技術水準に大きく左右されます.
 よって,上記はあくまでも日本国内ならば,と言う考え方であり,旧ソビエトで同様の設計を行うかどうか,保証が出来ないところが苦しいところです.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 98年にウエスティングハウスの原子力部門がBNFLに買収されたとき,売られたのは商業原子炉部門だけで,軍用炉部門は切り離されてたという話なのですが,その軍用部門は今どうなってるかご存じの方いますか?

D.B.,2010年01月03日 02:53

 【回答】
 1996年,防衛産業部門のウェスティングハウス・エレクトロニック・システムズをノースロップ・グラマンに30億ドルで売却.
 同部門はノースロップ・グラマン・エレクトロニック・システムとなっています.

 ただ,軍用炉部門が全てその中に含まれていたのか,私個人は少々疑問を持っています.
 基本的にDOE関連(核兵器関連施設と言っても間違いではない)の各研究所の物は分社化されて,Westinghouseブランドを保っているようです.
 ただし,こちらの方はどちらかと言えば,廃棄物処理などの後工程の部分であり,原子炉の設計などの表分野ではありません.

 個人的には,軍用舶用炉などの設計分野は,Gerald R. Ford級原子力空母に搭載が予定されているA1B原子炉の開発元である,Bechtel社に移ったのではないかと推測しています.
 Bechtel社は米国内の原子力プラントの「レイアウト設計他の全体設計(アーキスト・エンジニア)」をこなしたことのある,大変に実績ある企業ですが,その内実はほとんど明らかにされていません.
 そのため,上記の推測もあくまでも推定でしかありませんが,今後の米海軍の軍用舶用炉の開発体制がGEとBechtelで受け継がれようとしている現在,そう見るのが最も合理的ではないでしょうか.
(製作の方は不明です.
 原潜用のGE設計の原子炉群がGeneral Dynamics Electric BoatやNorthrop Grumman Newport Newsの両造船所で組み込まれている一方で,米空母の方はキャパシティの問題他からもNorthrop Grumman Newport Newsに限られているのは,原子炉自体の供給も含めて示唆に富む物と考えます.
<この点,現在のバージニア級などの現状をご指摘下されれば幸いです.)

 もし,ノースロップ・グラマンが軍用舶用炉の開発体制を受け継いでいれば,Gerald R. Ford級原子力空母に搭載予定の軍用舶用炉はA1B原子炉ではなく,「A1N原子炉」となったはずです.そのため,WHの軍用舶用炉開発部門はBechtelが受け継いだものと見るのが自然と愚考します.

 以上,推測ばかりで申し訳ありません.
 また,井上さんなど,この点に関して詳しい皆様のご意見を請いたいと思います.

へぼ担当,2010年01月03日 06:08

 Bechtel なら,NAVSEA からときどき,核動力主機に関する契約が出てますよ.
 昨年に公表された分だけで 4 件.

井上@Kojii.net,2010年01月03日 10:28

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より



 【質問】
 ベクテルにウエスティングハウスの設計陣が?
 ただそれ,売却されたという明確なソースが見当たら無いですよね.
 隠す必要も無いとは思うんですが・・・

JSF,2010年01月03日 05:58

 【回答】
 明確なソースは有りませんが,以下の3点から私個人はその線が濃厚と考えています.

1.あくまでも私個人の推測でしか有りませんが,売却ではなくおそらく集団で移籍(転籍)したものと愚考します.
 もちろん別会社を設立して一斉に移ったり,吸収合併される手はあると考えますが,このような移籍(転籍)の例は「隠す絶対の必然性こそ有りません」が,逆に「公表する必要性」もありません.
 むしろ軍用のため,問われない限り公表したがらないでしょう.
 この分野においては,民生用とはいえ,つい最近に日本・アメリカの某社間でも大規模に行われましたが,その旨の公式発表は一切ありませんでした.
 ましてや軍用分野であれば,なおさら発表する必然性はないかと考えます.

2. Bechtelという会社は非常に特殊なところがあり,この分野の企業群の中でも特に動向が分からないところがあります.
 プレスリリースもそれほど多くありませんし,実際に当たったことのある方に聞いてみても,同業他社に比べ,非常にガードが堅かったと聞いています.
 まあ,ある意味アメリカの国策を担っているBechtelならではなのかも知れませんが,「他とは何か,しかし確実に違う」ことだけは確かなようです.

3. 民生用WHの技術者の話によると,軍用関係は別の企業に移籍したとのこと.
 ただし,何処に移籍したかは一切話せないとのこと.

 以上より,「売却されたという明確なソース」は,私自身いろいろ心当たりを探ってみたのですが見当たらないところ.そのため,あくまでも推測でしか無く,大外れである可能性も否定できません.
 しかし,そもそも多大な経験・知見を必要とする原子炉周りの設計を,Bechtelが突然A1B原子炉と言う形で具体化した以上,その可能性は高いのではないかと愚考します.

へぼ担当,2010年01月03日 06:41



 【質問】
>民生用WHの技術者の話によると,軍用関係は別の企業に移籍したとのこと.
>ただし,何処に移籍したかは一切話せないとのこと.

 そりゃ移籍先はGEかべクテルしかないわけで,なぜかべクテルは秘密にしたがっていると・・・
 うーん,なんでなんだろ.

JSF,2010年01月03日 23:00

 【回答】
> 移籍先はGEかべクテルしかない

 軍用舶用炉ではご指摘の通りですが,民生用も考えれば現在の原子力ルネサンスの状態では,その手の設計が出来るエンジニアは,米国内では絶対的な人手不足もあって引く手あまたの状態です.
 そのため,GE自体もなりふり構ってはいられない状態
(実際に,米国内に限ってもWH他とやって凄まじいことになっているとのこと)
にあるわけで,何も移籍先がGEやBechtelだけではないことを指摘すべきかと考えます.
 それに元来のBechtelの秘密主義を併せて考えれば
「さほど不思議ではないし,違和感も感じない.」
と言うのが,私個人の正直な印象です.

 因みに日本国内でも同じ事で,定年延長や嘱託というのが連発されたりしていますが,少しバブル気味のところも(大汗).
 なお,これらの点は専門従事者であれば容易に,かつ長期予想ができる点があり,インサイダー情報にも引っかかるため開示注意.
 個人的な株取引も厳重注意と言ったところであり,少々困ったところでもあります.

へぼ担当,2010年01月03日 23:50

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より


 【質問】
 Bechtelという会社について教えてください.

 【回答】
 完全な専門分野なのに不勉強で申し訳ないのですが,現在のBechtelの立ち位置がよく分からないというのが正直なところです.
 従来のBechtelは,設計・施工管理に特化した元請という意味合いが強く,物作りの面はメーカーというより,商社的な発注+技術サポートという点がメインでした.
 そのためA1B原子炉の出現はある意味驚きではあったところであり,物の制作はもとより,サプライチェーンについても大変に興味深いところです.

 ただ,現在までのところ,様々な情報源を持ってしても,Bechtelに関しては分からない点があまりにも多いところが実情.
 今後も機会を追って探っていきたいと考えていますが,皆様のご指導を仰ぎたいところです.

へぼ担当,2010年01月03日 15:20

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「協力企業」って何?

 【回答】
 原発の運転管理において,業務を委託されている企業のことで,「協力企業」「関連会社」と呼ばれ,平均して各発電所についておよそ50社ほどある.
 協力企業の請け負う業務は,警備や廃棄物処理施設運転のような支援業務や,不具合発生時の保修工事のような非定常業務など.
 これら企業は,職種別技能競技会を行うなどして,適切な品質確保に努めているという.

 原子力艦に関しても,こうした協力企業が活用されている可能性は高い.
 たとえばフランス海軍特殊部隊による,原潜「ルドゥタブル」への模擬襲撃において,潜水艦基地に外部から通っている労働者の保安体制の穴を突いて,襲撃を成功させているが,この「外部から通っている労働者」が,協力企業の従業員であろうと推察される.

 ちなみに広瀬隆は,『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』(東京書籍)の中で,協力企業と思われる会社が,ホームレスを集めて原発内での「危険な作業」に従事させており,その割合は50人に一人にのぼり,たいていは体がおかしくなるか,またはそうなる前に怖くなって辞める,といった旨,書いている.
 しかし上述のように技能が必要な仕事が多いことや,放射線管理区域での管理状況から考えて,あまり信憑性のある話とは思われない.

 【参考ページ】
『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.44-45,55-60

【ぐんじさんぎょう】,2010/11/14 21:20
を加筆改修

 入社した頃は,下請け孫請けひ孫請けなんて言ってましたが,5年前当たりから1次協力業者,2次協力業者って成っていきましたなぁ.
 まだ年配の方はたまに下請けと言いますが,基本,「協力業者」で統一されたかなと.

Bernoulli@ゼネコン in mixi,2010年11月12日 04:42

 奥瀬サキの短編にあったなー>ホームレスの話

kira2 in mixi,2010年11月12日 07:58


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