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(画像掲示板より引用)


 【link】

net bunker」:スナイパーから身を護るバイオニック・ボディアーマー,IBMが特許申請 - スラッシュドット・ジャパン

朝目新聞」●防弾チョッキなしでも銃弾をよけまくれる新装備服,IBMが特許取得  (by cotinus)

朝目新聞」<2010/11/08〜11/10>●兵士たちの命を救った防弾用具と撃ち込まれた弾丸の爪跡  (of カラパイア)

「アルファルファ」:防弾性能なさすぎワロタwww


 【質問
 日本では防具としての「盾」は登場しなかったのでしょうか?

 【回答】
 古墳時代からあり,鎌倉時代や戦国時代でも使われ,それなりに進化・発達している.

 日本では携帯用の盾を手盾,または持盾といい,革または木製,ときには木質革包みとするが,総体に小型で,もっぱら歩兵による打物や長柄の戦いに用いた.

 騎射防御として用いるのは陣前に並列する仰盾(かいだて)であり,櫓の周囲や船のへりにも並列するが,これは大型で鉄または鉄質革包みもあるが,多くは堅硬な木の厚板を使用し,鎌倉時代ころから表面に旗標と同様,所有者の標識をつけた.
 仰盾は長方形の板で,裏面上部寄りに横桟をいれて支柱をとりつけるが,さらに板の端に懸金と壺を設けて板塀のように懸け合わせる仕立があるのを畳盾といった.

 なお木盾の表面に大竹を割りひしいで張ったのをひしぎ盾といい,火器が発達してからはもっぱら竹束にかわった.
 鉄砲伝来後は,鉄砲隊が城から射撃するとき,竹などでできた盾を使ってたようだ.

▼ 西欧の剣は切るより突くので,盾が運動的に必要になり易い.
 日本刀は斬るから体の動きが回転するので,盾を持っていると運動力学的に不自由.
 このへんの違いかと思う.

 また,現実の戦闘では,殆どが弓矢と槍だったようなので,長槍と盾を片手づつで扱う筋力が,日本人にはなかったのもあるかと思われる.▲

日本史板,2003/07/29
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 先のイラク戦争や湾岸戦争,ベトナム戦争など,近現代戦では兵士は「盾」を持っていませんよね.
 歩兵に盾は有効ではないのでしょうか?
 オマハビーチでも,盾をかざしつつ突撃すれば,MG42の犠牲者はかなり減ったんじゃないかと思ったりするんですが・・・.
 それに,イラク戦争の映像なんかを見ていると,どうも歩兵は無防備なように見えるんです.
 盾をもちつつ移動した方がよいような・・・・・.

 【回答】
 人一人が隠れることができるためには,盾のサイズは0.6m×2mぐらいは必要でしょう.
 できれば1m×2mかな.
 17kg/m2程度の重量のケブラー/セラミック複合材で5.56mmNATO弾をぎりぎり止められるか止められないか程度であるというレポートがあります.
(最適化した構成で850m/sのNATO弾-銃口初速920m/s-を止められる).
http://www.dec.fct.unl.pt/projectos/impacto/Public_Papers/Report%20on%20Ceramic.pdf
であれば25〜35kg程度の複合材で盾が作れる事になりますが,実際には枠や取っ手,支持材などで35〜50kg近くになりそうです.
 それで5.56mm通常弾をかろうじて止められる,となると徹甲弾や7.62mmを止めるための盾はどんな重さになるやら…….

 また,人間が持ち運べる重量は限られていますから,35kgの盾を持ち運ぶためには35kg分の他の装備を捨てねばならず,つまりは盾しか持てない事になりそうです.

(HN "System")

 つまり,そのような盾を装備すると到底歩兵戦闘などできず,せいぜい,前線が膠着したときの仮設陣地くらいにしか使えないでしょう.

 しかも,より口径の大きい火器には役たたずだし.


 【質問】
 防弾効果のある重い盾を持ち,身を守れるメリットと,ライフルを両手で扱えなくなり,盾の重さが行動を阻害するデメリットでは,後者の方が大きいですか?

 【回答】
 盾の防御能力は,戦場における物としては極めて限定的であり,全方位防御でもない.

 人間が持ち歩けるサイズの盾では,最初期の火縄銃を除けば現代の小銃弾は防げない.
 日本の機動隊が持っているジュラルミン製の盾は,あくまで投石や火炎瓶などの攻撃から身を守るだけなので,防御力は期待できん.
 しかも完全に防げるわけじゃない.
 あんなものを野戦に持っていけば,逆に狙われる.
 あれだ,ああいった防御用盾の防御力について調べたいのなら「浅間山荘事件」を調べればいい.

 盾を歩兵に持たせるくらいなら,歩兵の着込むボディアーマーを軽くて手榴弾破片などに対する防御能力を高めた物にさせるくらいでちょうどいい.
 最もそのボディアーマーも,現在ではさほど軽い物でも無い(総重量10kg以上の物も)ので,歩兵全てが着るかどうかは別問題だけど.

軍事板,2009/11/19(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 警察ではよく見る防護盾ですが,あれの防弾性を高くして軍の歩兵に使用するというのは無理なんでしょうか?

 【回答】
 難点が二つ.
1)経験上,アレで猟銃の弾を防ごうとすると三枚重ねにする必要がある.
2)ガンダムじゃあるまいし,片手でライフルを撃てるわけねーだろ.

 戦場での死傷の殆どが砲爆弾の破片によるものなので,「全周を軽防護」(防弾ベスト)の方が有効.これなら,当たったら死にそうな部分をセラミックプレートで補強するだけでいい.

軍事板


 【質問】
 防弾チョッキ着てたら,何発撃たれても死なないの?

 【回答】
 撃たれりゃ死にます.
 防弾チョッキは直撃弾を防ぐというより,弾片を防ぐことを主目的としているからです.
 それに,弾が貫通しない場合も,着弾時の衝撃を和らげるというだけで,弾の運動エネルギーそのものは,体をぶん殴られたように効きます.
 更に言えば,ある一定以上の弾を防ぐことも出来ません.
 昔は一発で全面にヒビが入ったものもあります.
 最近はそうでもないですが,そんなに何発も食らうことは想定外です.

 ソマリアのレンジャーも,セラミック・プレート付きを着てても大勢死んでいます.
 セラミック・プレート自体が急所をある程度覆ってるだけで,他の部分のケブラーは9mm弾を防ぐ程度だからです.

 7.62ミリを防ぐくらいの防弾チョッキもあるにはありますが,そんなの着て行軍は無理です.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 防弾チョッキは一番強いのでもAK-47をやっとかっと防げる程度らしいですが,50bmg,それ以上の弾は何故防げないのでしょうか?

 【回答】
 12.7x99の徹甲弾は100mで18.7mm,300mで14.9mm,500mで12.4mmの圧延装甲板を50%の確率で貫徹できるらしいです.
 まあ19mmで試算してみますと,覆うべき胴体のサイズを40cm×60cmとしまして,これを前後に2枚使いますよね.
 圧延装甲の比重は知らないのでかわりに鋼の比重7.85g/cm3を使います.

40cm×60cm×1.9mm×7.85g/cm3×2=71592g≒71.6kg

ということでなんか無理っぽいことがお分かりいただけたかと思います.

 新素材とかも色々ありますが,そんな劇的には軽くならないんじゃないかなー.

 ちなみに12.7mmの徹甲弾は,10トン程度の軽装甲車では耐えられないことが多いっす.

軍事板

▼ 追記.
 ベトナム戦争時にヘリのドアガナーなどが装備したチキン・プレートは,グラスファイバーと耐弾ナイロンを10層以上重ねて接着し,さらにセラミックの人造繊維を重ねてコーティングしたもので,100ヤード(約91m)の距離から7.62mm弾に耐えられるように作られていました.
 実戦では条件次第では12.7mm弾を防ぐ事もできたようです.
 もっとも,重量は11kgと長時間の着用は厳しかったようですが.

 また,現代のボディアーマーに酸化アルミナ等のセラミックプレートを組み合わせたモノで言うと,胸部と腹部の30cm×25cmの範囲に限定すれば7.3kgの重量で12.7mm弾を防げるモノがあるらしいです.

 ↑の計算で言えばまぁセラミックの圧縮強度が鋼の2倍以上でしすし,防弾用セラミックの比重はわからんのでアルミナの比重3.6g/cm3で乱暴に計算すれば,前面胸腹部限定の距離100mでそれなりの防弾力持たせようとした場合は,
30cm×25cm×1.9mm×3.6g/cm3×1=約5.13kg
なので現実的な範囲かなと.

 ただ,おそらく近距離で撃たれたらまず間違いなく貫通するでしょうし,
 仮に貫通防げたとしても,内臓への衝撃とか半端ないんじゃないかと思わないでもないですが.
 内臓破裂して死なね?


 以上のソースは,
軍事研究2007年6月号「兵を守る最新ボディ・アーマー(その1)」鳥羽利男
坂口電熱
アルミナセラミック
です.

オッポレ in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分▲

▼ ちなみに『憂国』(アレクサンドル・レベジ著,徳間書店,1997.9) P111によれば,レベジはボディアーマー(原著では防弾チョッキ)をまったく信用しておらず,友人が新型ボディアーマーを入手し,隊員の前で喧伝し100メートルの距離を取り,自分で試射したが見事貫通してしまった(笑)

引用開始――――――
P111

 ついでながら防弾チョッキについて,アフガニスタンで確信したが,私は防弾チョッキをまったく信用していない.
 これは今日でも同様だ防弾チョッキはいつ狙撃されるともしれないこの世の権力者のものだろう.

(略)

 私のよき友人がいた.
 軍アカデミーの同級で,現在ソ連連邦英雄,将軍だが,当時はまだ大隊長だったV・A・ヴォストロチン少佐だ.
 彼は新しい防弾チョッキを大隊に取り入れ,これを大いに喧伝することにした.
 大隊を整列させ,党と政府の課題に関してひとくさり時宣をえたスピーチを行ってのち,100メートルの距離に防弾チョッキをつるすように命じた.そして自分で試射した.

「もって来い」
 彼は命じた.
 兵士がもって来た防弾チョッキは,胸と背が貫通していた.
「ふむ.今度は200メートルにしろ」
 距離をはかり,チョッキを吊るし,試射した.貫通.
 続いて300メートルにした.
 分隊が一斉に試射した.
 これも貫通.
 ヴォストロチンはその後ながいあいだこの防弾チョッキのことではオフレコながら唾をはきかけていた.
「チョッキが全部もってこられた.
 あざやかな弾痕を見た.
 ひどいことになったと思ったね.
 効果をみようとして,何かまったく正反対のものを得たわけだ.
 なんとか脱しなくてはならない.
 そこで私は彼らに言った.
『勇士たちよ,われらのトゥーラやイジェフスクの名人たちは何んという武器をこしらえておるんだ!
 防弾チョッキどれひとつとっても,100メートル,200メートル,300メートルにもたえられないとは.
 防弾チョッキはお粗末だが,その代わり武器はいい.
 私は決して着用しないことにする』」

――――――引用終了

 実物が手元にありますが,防弾よりも対弾片防御に重点が置かれている設計らしく,あんまし防弾性能はよくないのがこの当時のボディアーマーの特徴だったようですね.
 そこはグダグタ言っても仕方がないので,文句言いながらも第一次チェチェン紛争まで使われていました.
 その後は技術の進歩によって旧世代は廃れていき,今では後方部隊が使われるだけになりました.

 しかしレベジ大隊長(当時)の機転に上手さに痺れる! 憧れるゥ!

アフガーン紛争における空挺軍と6B5ボディアーマー


CRS@空挺軍 in mixi,2008年03月20日10:33▲



 【質問】
>胸部と腹部の30cm×25cmの範囲に限定すれば7.3kgの重量で12.7mm弾を防げる

無理じゃないか?
 たぶん防弾ベストの規格『NIJ Standard - 0101.04』の『LevelW』のところに,『M2 AP』と書かれているのを勘違いしているのではないかと思うんだが……
 あそこに書いてあるM2 APは,30-06 Springfield弾のことです.
M2 Ball Bullets
 すなわち,7.62×63ミリ小銃弾のことです.
 M2重機関銃の弾薬ではないです.

 LevelVA相当の防弾ベストに,前後にセラミックプレート入れる(LevelWになる)と,だいたい7kgくらいの重量になりますので,7.3kgの重量で12.7mmが防げるというのは,にわかに信じがたいです.

極東の(以下略 in FAQ BBS

 【回答】
 私も半信半疑ですが,当該記事には11kgのチキン・プレートが
「状況によっては,50口径の機関銃弾直撃に耐えられる性能があった」
と書かれていたりします.
 当該記事には参考資料として色々載ってますが,そっちを精査したら詳しく載ってるかもしれません.

>LevelVA相当の防弾ベストに,前後にセラミックプレート入れる(LevelWになる)と,
>だいたい7kgくらいの重量になりますので,
>7.3kgの重量で12.7mmが防げるというのは,にわかに信じがたいです.

 当該記事では,「胴体前面」のみで7.3kgですね.
 背面まで入れるとおそらく10kg越えるんじゃないですか?
 陸自の新型ボディアーマーも前後にプレート入れて12kgいきますし.

 どちらにせよ,もう少し資料漁った方が良いかもしれません.
 仮に防げても,「かなり距離が離れてるなど,条件が良い場合に限る」のかも知れませんし,
 そもそも記者か参考資料が間違ってる可能性もありますから.

オッポレ in FAQ BBS

>かなり距離が離れてるなど条件が良い場合に限る

 あ,すまん,自分が勘違いしてたみたい.
 「絶対防げる」って保障があるわけじゃなくて,「防げることもあるよ」ってレベルなら,普通にある.

 .50cal(12.7×99)弾の通常弾は,500mで8mm,1000mで4mmの装甲を貫きます.
 これは.30cal(7.62×63ミリ)徹甲弾M2の貫通力より劣ります.(100m以下で10mm以下)

 『NIJ Standard - 0101.04』の『LevelW』は,この30-06徹甲弾に対処可能ですから,それ以下の貫通力しか持たない.50cal(12.7×99)通常弾を防ぐことがあっても,不思議ではありません.

 ただし,.50calは.30calの,約四倍のエネルギーを持っているので,貫けちゃっても不思議じゃないですけど.

極東の(以下略 in FAQ BBS


 【質問】
 現行の軍隊は,銃弾を防げる防弾チョッキを着てるのですか?

 【回答】
 最近の米軍の防弾チョッキは,当たり前のように7.62mmを止めるそうだ.
 兵士は「防弾チョッキ」を必ず着るわけではないが,「ボディアーマー」は普通は着る.

 米軍の最新ボディーアーマーIntercepterは,7.62mmNATO弾の繰り返しのヒットに耐える.

軍事板,2005/04/10(日)
青文字:加筆改修部分

 米軍が配備しているPoint Blank社のInterceptorボディーアーマーはカラシニコフの7.62mmx39だけでなく,遥かに強力な7.62mmNATOのくりかえしヒットに耐える.
 この有名なビデオ
http://www.pointblankarmor.com/news.asp# [リンク切れ]
見るように.今年7月,バグダッドでビデオカメラとドラグノフライフルを持った二人組みのテロリストが,米軍のTSCHIDERER衛生兵を狙撃した.
 弾は胸に当たったがボディーアーマー内の防弾プレートで止められ,本人は軽いアザを作っただけで助かった.
 テロリストは負傷して近所の屋根裏に隠れているところを捕虜となり,ビデオが押収された.
 ちなみに負傷したスナイパーをTSCHIDERER衛生兵が手当てをした.

 ハードタイプのプレートを使うタイプ以外に,ウロコ状のソフトタイプのプレートでライフル弾を止める,新しいタイプのDragon Skinというボディーアーマーも実用化している.
http://www.pinnaclearmor.com/body-armor/sov.php

軍事板,2005/11/19(土)
青文字:加筆改修部分

 現在の段階ではこのレベルのボディーアーマーを前線部隊に広く配備しているのが確認されているのは,米軍だけと思われる.
(2003年12月から配備開始)

 これ以前のボディーアーマーは,ライフル弾を防げるものは重すぎて戦闘活動が不自由.
 軽いものはライフル弾を防げなかった.

 Intercepterはケブラーのベストの胸と背中に,それぞれボロン・カーバイド・セラミックのプレートが装着される.
 プレート込みで重量は16.4 pounds(7.4kg).
 ケブラーベストのみでも9mmパラベラム弾を防げる.
 プレートを装着した場合,防弾効果は飛躍的に上がり,7.62mmNATO,5.56mmNATO(M16),7.62mmx39(AK)を始めとする軍用ライフル弾の繰り返しのヒットに耐える.
 イラクとアフガニスタンですでに多数の兵士が命を救われ,あるいは負傷を免れている.
 Point Blank社が製造を委託されている.
http://www.olive-drab.com/od_soldiers_gear_body_armor_interceptor.php
http://www.securityandsafetysupply.com/products-body-armor/military-body-armor-8.html

 ちなみに,
国際規格(NIJ規格0101.03)

防御クラス  ストップ可能な銃弾レベル
I    .22口径,.38ACP
II    .357マグナム,9mmx17,9mmx19
III    .44マグナム,7.62mmx39
IV   .30-06徹甲弾

軍事板,2005/04/10(日)
青文字:加筆改修部分

 いわゆる防弾チョッキはもともとフラグメンテーションベストと呼ばれるもので,手榴弾や砲弾の破片を防御することが主であり,ライフル弾に対する抗弾力は無かった.
 80年代に入ってPASGT(地上兵員防護システム)と呼ばれる軽量の防護システムが一般兵士に普及するようになったが,これも破片除けの効果がメインで,ライフル弾に対する抗弾力を持つ「インターセプター」と呼ばれるボディアーマーが支給されるようになったのは,90年代の後半になってから.
(もっとも,一度に1〜2発程度しか止められないのでご注意)

 米軍であれば,大抵の兵士が「ボディアーマー」を身に着けている.
 もちろん戦車兵も.
 戦場で厳密に強制はされないようだが,無駄に死にたくないと思ってる兵士は大抵着ている.
 ただし,これらはいわゆる「防弾チョッキ」ではない.
 素人が見た目で識別するのは困難ですが,殆どの兵士が身につけているのは,銃弾に対する防御のためではなく,砲破片に対する防御を主目的として作られたボディアーマー.
 もちろん,防弾チョッキより遥かに軽い.

 小銃弾を止めるための防弾チョッキは,市街戦・室内戦闘等,小銃による接近戦が予想される任務の際に,主力の歩兵が身につける.
 ライフル弾を防げるように設計されたプレート(合金ないしはセラミック製)を防弾衣の中に入れてれば大抵は大丈夫.
 ……と言っても実際は貫通されてしまったり,弾自体は防げても着弾の衝撃で怪我をしたり,装甲されてない部分に弾を喰らったりで,「防弾衣を身につけてるから安心」というわけでもない.

軍事板,2005/04/28(木)
青文字:加筆改修部分

(画像掲示板より引用)

 【質問】
 アメリカ海兵隊のことですが,イラクでインターセプターアーマーに直接MOLLEのポーチつけたり ,MOLLEのベストの上にポーチつけたりその他私物っぽいベスト使ってる人とか,ボディーアーマーの首周りと股間のガードの有無とかは,どれくらい個人の好みが通用するんでしょうか?

 【回答】
 米軍のボディアーマーは基本形の支給品の他は,個人で調達したものを装備することがあります.
 特に抗弾能力に不満がある場合,相当高価に成りますが自腹で買い揃えるということです.
 チェスト(胸部)やファウルカップ(股間),襟首は,特に能力不足が原因で致命傷を受ける事例が多いため,兵隊さんも必死ですし,また軍の方でも黙認しているようです.

 日本の自衛隊でもクラスV相当だったか,7.62mm×39程度に(非AP対応)耐え得るものが支給されています.

三等自営業 ◆LiXVy0DO8s in 軍事板


 【質問】
 以前,テレビでやっていた防弾チョッキのレビューで性能が破片避け程度といわれていたのですが,破片とはいったい何の破片でしょうか?

 【回答】
 戦場で歩兵にとって大きな脅威になるのは,榴弾(炸裂して破片をばらまく砲弾).
 榴弾は対装甲車両用の徹甲弾と違って,重装甲に対する貫通力は少ない(最近は装甲貫通力のある榴弾ってのもあるんだが,とりあえずおいといて)が,広範囲に破片をまき散らすため,装甲の薄い車両や服と皮膚しかない歩兵にとって非常に危険な存在.
 逆に言えば,これが防げれば歩兵の死傷率はかなり落とせる(重傷が軽傷になるだけでかなりマシ).

 というわけで,小銃弾や機関銃の弾は防げなくても(というか,小口径の拳銃弾ならともかく, 軍用の小火器を防げるような防御力を持ったチョッキを作ったら凄い重さになる),破片よけでもかなりの効果は見込めるのです.

軍事板


 【質問】
 防弾チョッキって実際どのぐらいのダメージ軽減なんでしょうか?
 拳銃ぐらいなら防ぐとか言われてるものは,実際拳銃で撃たれても痛みもまったく感じないんでしょうか?

 【回答】
 防弾チョッキの抗弾の考え方は基本的に,弾丸が人体に貫入しないことで致命的な傷害を受けない,という一点です
 そのために,アーマーキャリアの防弾繊維の他金属やセラミックの補助装甲版を適時挿入して使用します.
 その防弾能力は,軍用の物であれば大抵の軍用拳銃弾の貫通を受けません.
 着弾時の衝撃は,防弾繊維と装甲板によりある程度吸収されるものの,その衝撃力は鈍器で殴られた程度です.
 ある防弾装備メーカーではデモンストレーションとして,防弾衣を着た人体への射撃というのをやっていますが,見た目にちょっとしたパンチを喰らった程度のショックを受けていましたね.

三等自営業 ◆LiXVy0DO8s in 軍事板


 【質問】
 16日付の朝日新聞に「おしゃれ防弾着 急成長」という記事がありまして,
 ここで紹介されてる防弾チョッキが,大して重くない上に38口径で至近距離から撃たれても痛くないという代物だったのですが,有り得るのでしょうか?
 防弾チョッキというと,穴が開かないだけでめちゃくちゃ痛いという印象があるので,不思議に思いました.
 客を納得させる為のサービスという事だったので,ひょっとしたら思いっきり減装した弾なんじゃないのか?とも思ったのですが,どうなのでしょうか?
 尚,記事はコロンビアの話です.

 【回答】
 現在の抗弾装備は軽量化,強靱化が進んでいて,同じ重さでの防弾性能は年々向上しています.
 そこで,対応する弾薬の威力を低く限定し,防弾性能と快適性を両立させたオサレなモノが登場しました.
 防弾部と衝撃吸収部を組み合わせる事で,被弾直後の硬直時間を短縮させる狙いもあります.

 ちなみに,コロンビア辺りでのデモシュートは,「丸見えテレビ:でも放映されましたね(笑)
 デモンストレーションでベストを装着して撃たれるのは新入社員の仕事だとか.

三等自営業◆LiXVy0DO8s


 【質問】
http://www.youtube.com/watch?v=gNY1MtsVwG8
にて,ドラゴンスキンというボディアーマーが盛んに褒められているのですが,どうなんでしょうか?
 額面どおりに受け止めていいもんなんでしょうか?

 【回答】
 曲げる必要がある部位に装着するなら,板状のセラミックでは無理なので,スケイルメイル的なそのドラゴンとかが有利でしょう.
 それ以外の場合,一定面積をもっとも効率よくカバーするのは板状のセラミックであり,仕様通りに作られたものは数発のダメージに耐えられます.
 円板重ね合わせで面積をカバーしようとしたら,当然ロスが出ます.
 つまり,その面積をちゃんとカバーしようとすれば,一枚板よりも重くなるということです.

 ダメージを受けた場合の処理も問題で,一枚板は入れ替えて終わりですが,ドラゴン何とかではおそらくジャケットごと交換になるでしょう.
 費用も場所や重量もムダになります.
 セラミックでカバーしなければならない身体の重要箇所は胴体であり,屈曲はさほど必要ありません.
 ドラゴンとかを導入するなら関節部への追加ですが,これは当然その分重量増.
 フィットによる快適さを得るために一枚板セラミックとの置き換えるなら,上記の理屈で重量,ロスの増加.
 耐弾力を一枚板と同等に保った場合,快適さが本当に増えるか疑問も残ります.
 価格と重量が一枚板と同等なら悪くない商品であり,重量は同じだが高いのなら贅沢品であり,同性能で重量が増すなら考え物のシロモノでしょう.

軍事板


 【質問】
 軍用ヘルメットの防弾性能ってどれくらいですか?

 【回答】
 高性能ケブラー,あるいはスペクトラ素材ヘルメットであれば,NIJのIIIA相当.つまり,9mmパラベラムから44マグナム弾までの直撃を耐えることができます.
 破片防御についてはNATOのSTANAG 2620相当,つまり音速の2倍で飛来する1g程度の小破片に耐えることができます.
 逆にライフル弾の直射はダメです.

フォースの力で防弾性upしたヘルメット

(うそ)


 【質問】
http://hobun.com/gargoyles.html
にある,「サングラスが22口径の弾丸止める」なんて本当にできるんですか?

 【回答】
 本当です.少なくともメーカーはそう主張しています.
 これは,当初知られていませんでしたが,シュワチャンの最初のブレーク・ムービーだった「ターミネータ(1)」内でシュワちゃんが使用したことで有名になりました.
(サングラスが(22口径以上の)弾丸を跳ね返す描写は過剰宣伝になるので不採用にされたようですが・・・)
 今は,透明仕様がTVドラマ「ER」で手術用に使われるなど,割とスクリーン登場機会の多いサングラスです.


 【質問】
 「砂ぼうず」という漫画で,
「50口径が背中に直撃したが背負っていた空冷機にあたったので助かった」
という描写があるのですが,背中に鉄のかたまりを背負っていれば耐えられるのでしょうか?
 なんか衝撃だけでも絶命しそうなイメージがあるのですが・・・

 【回答】
 背中に背負った装備に着弾した為に,弾道が逸れて人体への命中を免れた,と言う表現です.
 命中時の残存速度や弾道経路によっては,エアコンのようなものである空冷機を貫通し,破片と共に食い込み,結果人体へダメージを与える事にもなるでしょう.
 このような事例は,実際の戦場において枚挙に暇が無く,そう言った遮蔽物の有無が,一瞬の生死を分ける事がままあります.

 余談ですが,最近のイラク・アフガンでの戦闘でも,報道カメラの前を掠める50口径弾の映像が公開されています.

三等自営業 ◆LiXVy0DO8s in 軍事板,2009/07/02(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 よく古い映画で,
「敵の放った凶弾が命中!→でもコインとかペンダントに当たって致命傷にならず」
という古典的手法がありますが,あれって仮に防げたとしても,あばらとか折れますよね?

 【回答】
 コイン一枚だと全く信憑性がない.
 体内への侵入は防げても,金属が高速でぶつかるという事実が変わらないから,衝撃という観点で同じ.
 警察手帳(アメリカ式のバッチがはまったヤツ)なら,金属で貫通を防ぎつつ,手帳の紙の束で緩衝した,という理屈が一応成立する.
 札入れなら同じことが言える.
 コインの部分で弾頭の貫入を防ぎ,札束で緩衝して受け止めた,としても,骨折にはいたらずとも,ぶん殴られたぐらいのアザができるのが現実だろうけれど.

 ロケットやペンダントだと弾かれて弾道が変わるかも知れん,が,多少変わるだけで運動エネルギーを減殺するのは無理っぽい.

 以上は全部,拳銃弾の話..38以下なら運良くそうなる場合もあるかな,ぐらいの.
 ライフルだったらどれも無理(笑).手帳が電話帳でも難しい.

 対物ライフルの弾丸をたった一枚のコインで防いでいた,とかいったシーンがあったら笑う.

軍事板

 ちなみに,数フィートの至近距離からAK-47で撃たれたが,iPodが盾になり無傷だったという話があります.
 ただしボディアーマーも装備していたので,iPodの効果なのかは不明.
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070406_ipod_saves_soldiers_life/
http://www.flickr.com/photos/tiki/445618364/

 【参考リンク】
ポケットに入れた聖書が銃弾を止め兵士の命を救う

仮 in FAQ BBS

486 :名無し三等兵 :2007/01/09(火) 14:41:43 ID:???

 絶頂期の「アフ○ヌーン」だったら7.62ミリは止められたと思う(笑)


軍事板


 【質問】
 ハンドガンの弾を水で遮る場合,どれくらいで殺傷力を無力化できますかね?
 簡単に言えばどれくらい潜れば,水面上からの銃撃から身を守れるかってことなんですが.

 【回答】
 ディスカバリーチャンネルの「怪しい伝説」でまんまそれな実験をやっていた(水中に弾道ゼラチンを沈めて水上から30度の角度ぐらいで撃つ).
 んでもって,9ミリの拳銃の場合,2.5mぐらい必要だったはず.
(実験した中だともっとも深い水深まで到達)

 ショットガンだとその半分ぐらい,
 ライフルだと弾が速すぎて,水面に当たった瞬間,弾が砕けてしまうので30cmももぐれば安全じゃないかという結果だった.

軍事板

 【参考映像】
http://www.youtube.com/watch?v=oRPVbIWsGeU&mode=related&search=〔リンク切れ〕
http://www.youtube.com/watch?v=gEyimoozVbk〔リンク切れ〕

肥後守 in FAQ BBS

 これと関連した映像で,対物ライフルを水に撃ってる動画がありました.
http://www.youtube.com/watch?v=IWV3JWg-IGQ

通りすがり in FAQ BBS


 【質問】
 ディスカバリーチャンネルの実験の番組で「水の防弾能力」という実験をしていました.
 結果的に警察で使うような45口径以下は水面から3m(銃弾の弾道で3mなので水深にあらず)で肌を貫通しない.
 射出速度が秒速500mを超えるようなマシンガンなどは水面に打ち込むと着水のショックで弾が破裂,水中にまったく弾が届かないそうです.
(実験のマシンガンの名前は忘れましたが秒速700mぐらいのと秒速912mぐらいのを使ってました)

 以上は軍隊では既知の問題でしょうか?
 映画では川とか海に潜った敵を撃つシーンがありますが,現実でも水面に銃撃ってするんでしょうか?
 それとも,水中にいる間は撃たないでいるのでしょうか?

 【回答】
 水の防弾効果は既知と言えば既知.
 これを応用した物に液層防御があり,戦車・装甲車用の外装型の装甲としてHEAT(成形炸薬弾)・弾片防御対策として飲料水タンクや燃料タンクを配置する事がある.
 質量効率は良くないが,メルカバやスウェーデンのS戦車が採用している(いた)な.

 現在では対潜目的,機雷掃討や水中潜入を計る部隊やテロリスト対策に,スーパー・キャビテーション効果を利用した水中目標攻撃用の弾丸も存在する.
 代表例は
http://www.globalsecurity.org/military/systems/munitions/mk258.htm

 それと,歩兵や特殊作戦部隊向けにアンダー・ウォーター専用の銛状のかたちをした弾丸を撃つ銃火器も市場に出ている.
(AK系列の突撃銃をベースとしたものがそれなりに有名)

 余り参考にならないかもしれんが,今や技術の進歩に伴い,
「水中にいる間は撃たない/撃たれない」
という常識も危うい物となってきていると言えるのかもしれないな.


 【質問】
 ドイツ軍に包囲されたソ連軍が,死体を積み上げてそれを弾除けにしてまで最後まで抵抗した,っていう文を読んだんですが,人体はどのくらいの防弾性能をもつのでしょうか?

 【回答】
 体内弾道というものがあり,銃弾は空気よりはるかに抵抗が大きい体内では尖端を前にすることができず,反転して後端が先になります.
 この過程で人体を損傷するのが目的でもありますが,逆に一人の身体分を通過した弾丸はその時点で大きくエネルギーを消耗しており,しかも鈍端から入ることになります.

 徹甲弾の類ならともかく,人体に最大限のダメージを与えるべく作られた銃弾は,すべからく一人分通過後は大変無力になります,なってしかるべきです.ということ.

 M16A1がA2になったのもライフリングのピッチを上げるのが主目的であり,それはアメリカ仕様の5.56mmより上記の効果が大きく,重量もやや大きいNATO仕様5.56mmを安定して飛ばすためでした.

 ちなみに第二次世界大戦にて使用されたFMJの弾頭は,”人体に最大限のダメージを与えるべく作られた銃弾”(例えばホローポイント,ソフトポイント)でないのはご承知のとおりです.少なくとも国際法上は.


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