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◆◆◆予備自衛官
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東亜FAQ目次


 【質問】
 予備自衛官とは?

 【回答】
 予備役というのは,「有事の際は現役に復帰して任務につく」退役軍人を指し ます.自衛隊の場合は,自らの意思で有事に任務につくことを選択した,退職 時に1尉以下の階級であった元自衛官のことをいいます.
 招集された際には通常,後方支援任務につきます.

 陸上自衛隊の即応予備自衛官は例外で,即自は最前線の戦闘部隊に所属します.
 以下引用.

[quote]
 即応予備自衛官は,非常勤の特別職国家公務員として,普段はそれぞれの職業に従事しながら,訓練招集命令により出頭し,即応予備自衛官として必要とされる知識・技能を最底限確保するため,年間30日間の訓練に応じます.
 有事等の場合には,防衛招集命令,国民保護等招集命令あるいは治安招集命令により出頭し,即応予備自衛官から自衛官となり現職自衛官とともに防衛招集,国民保護等招集あるいは治安招集に応じます.
 また,大規模な災害等が発生し,現職自衛官により構成される部隊だけでは対応が不十分な場合には,災害派遣等に派遣され,部隊の一員として活動します.
[/quote]
http://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/
http://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/seido/sokuou_01/
http://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/seido/yobijiho_01/

 予備自衛官の概要は以下のとおりです.

■待遇
 非常勤の特別職国家公務員 防衛招集命令及び災害招集命令により招集された場合,出頭日をもって自衛官 となります.

■資格対象者
 自衛官として1年以上勤務した者

 階 級  退職時の階級が1尉以下の者

 年齢等
 退職時の階級 士長以下・・・37才未満の者
           3曹以上・・・階級ごとの定年年齢に2年を加えた年齢未満の者

■手当の詳細

 1.毎月の手当
予備自衛官 4,000円
即応予備自衛官 16,000円

 2.訓練招集手当(/日)
予備自衛官 8,100円
即応予備自衛官 14,200〜10,400円
予備自衛官補 7,900円

■定員(法定)

陸上自衛隊:46,000名(予備) 4.889名(即自)
海上自衛隊:1,100名
航空自衛隊:800名

 (参考)
中部方面総監部HP

 技術が占める割合が高く,現役と技術レベルに差がある予備役が活躍できる場が少ないためか,海自や空自では陸自に比べると数は圧倒的に少ないですね. どれがいい悪いという話ではありません.
 予備役の充実は,特に陸軍では「有事の際に現役の負担を少しでも軽減する」 など「軍の危機管理」のために必須の制度です.

 マンパワーに厚みがある軍は, 余裕をもって要素が不確定な任務に当たることができます.
 軍をはじめとする危機管理エキスパートに必要なのは,つねに余裕がある精神 ・人員・装備・予算です.
 ぎりぎりのところまで追い詰められた形で運用を行 なっていると,いざ突発事態が発生した場合に必要十分な対処ができない恐れがあると思います.
 しかし,自衛隊の運用はギリギリの状態で行なわれているというのが現状のよ うです.

 そのためにも,予備役の充実は真剣に検討する必要があるのではなかろうかと思います.
 その前提として, 民間側は,国防に当たる予備役の役割を深く理解し,予備役の方々が心置きな く任務,訓練に励むことができる環境作りを担うことができるよう心がけたい ものです.

 余談ですが, はたして予備自衛官の定員はどの程度まで充足しているのでしょうか? 本当のところを知りたいところです.

(おきらく軍事研究会)


 【質問】
 予備自衛官の方が長期に亘って本職を離れる場合の手当てはどうなっているの でしょうか?
 会社員であれば,過去3〜6ヵ月間の平均賃金から算出はできますが,自営業の場合は,平均額の算出は難しいと思われます.
 特に相場師(株売買,先物買い)などの仕事をしている場合は,イラクへ派遣 されている間に大きな儲けを逸失するやも知れません.
 以前から感じていたのですが,娑婆での儲けの算定はどうなっているのでしょ う?

(祇園)

 【回答】
 即自を雇用している企業に対しては,国から「雇用企業給付金」として月額4万7千円が給付されます.
 が,自営業者や私のようなフリ ーランスは,現行の制度では給付の対象になっていません.
 しかしながら,自分の仕事で稼ぐ金額のほうが,即自の訓練手当て1日分よりも多いというケース がほとんどですから,自営業者やフリーランスには「休業補償」を考慮するよ うに,隊友会が中心になって政府へ働きかけを行っているところです.
 これを即自が自らやってしまうと,自衛隊員が禁止されている労働争議に当たるおそれがあるので,どうしても隊友会が間に入らざるを得ないのが現状です.
 それでも実現は,まだまだ先が見えていません.

 ですから今は,《訓練に行かなければ稼げたはずの利益》を敢えて犠牲にして, 訓練に出頭している即自の使命感に頼っているのです.
 また,ご質問に
「イラクへ派遣されている間に大きな儲けを逸失するやも知 れません」
とありましたが,即応予備自衛官が海外へ派遣されることはありま せん.
 派遣先で事故(戦闘を含む)等によって死傷した場合の補償制度と,派遣させるために本業を中断させる間の休業補償制度が,事実上存在しないことが,主な理由だといわれています.

(陸上自衛隊の即応予備自衛官 ひら☆やん)

 航空自衛隊には現在,800名の予備役自衛官が在籍し,毎年の訓練出頭に応じております.
 基本的に予備自の給与については,年間7万円程度の俸給があるだけで,その他の手当については特段の指示は受けておりません.
 また,現職のように年金を貰う事もできません.定年まで在籍した方は別ですが.
 この不況のおり,中には会社に予備役であることを隠して訓練に参加している者や,無職であるにも関わらず,訓練に参加しているものもおります.誰も彼も 日本という国を愛し,自衛隊を愛しているものばかりです.己の生活を投げ打ってまで,参加している者もおります.

 そのような彼らに対し,国もそれなりの対応をして欲しいというのがホンネで す.
 私の会社は投資関係ですが,ご質問者のような危惧が現実化する恐れは十分に あります.
 予備役の給与は,どの階級も同様の扱いとなっており,娑婆での稼ぎなどは全く考慮されてはおりません. 年収1000万円であろうが無職であろうが同じです.
 恐らく防衛出動にでもなれば,考えていただけるかもしれませんが.

(航空自衛隊の予備自衛官 侍魂)

 侍魂さんの回答では年間7万円ということですが,いまから十数年前は月40 00円程度と聞いたことがあるので,改定されているのですね.
 あと,階級の昇進が早いということは聞いたことがあります(たしか「○○予備2曹」など と呼称).
 退職時に誘われたのですが,その当時の海自の場合は,召集されて も陸警隊(主に基地の警備を担当する部署)勤務になると分隊士にいわれ,お断りしました.
 確かに,数年前の知識で最新兵器に中に入っていっても,何も出来ませんし,やはり錬度の問題がありますから,海自の場合は現役に頼る部分がど うしても大きいと思います.日頃の演錬の成果というやつですね.

 生活保障については,やはり自衛隊以外の生活というものが現実にある方々の集まりなのですから,すべきと考えますが,支給基準の判断が難しいところだと 思います.
 残念ながらこの程度の知識しかありません

(海上自衛隊 元ミサイル員)

 前号で投稿いただいた予備自の方は,このご質問を受け,
「予備自に対して防衛出動がかかる時点では,状況は切迫していると思われます. その時点で予備自衛官は現在の職業と縁が切れるものと解釈しています.
 そのため,復職が難しいと言うことを訴えたかったのですが,うまく伝わらなかったのでしょうね」
とおっしゃっておられました.

(以上,おきらく軍事研究会)


 【質問】
 自衛官退職時の特別昇任は,一部報道にあるように,退職金水増しのためなのか?

 【回答】
 そのような姑息なお手盛りではない,と信じています.

 普通の国では,軍人が現役を退くと予備役になります.そして予備役はたいてい終身服役です.つまり,死ぬまで,国から呼び出しが掛かれば応じる義務があります.
 その時に,後輩に伍して昔の経験を生かして勤務してもらうわけなので,それに相応しい階級で遇さねばなりません.
 一方,予備役招集の者は,現役の同じ階級の者より後任(席次が下)になるのが世界中の軍隊の慣習です.
 ですから予備役編入時に,進級に相応しい人達の階級は前もって上げておくのです.自衛隊の退職時の特別昇任もこれに倣っています.

 我が国には,ごく少人数の予備自衛官制度だけで,本格的な予備役制度はありませんが,これでは万一の有事にはとても兵力が足りません.
 世界中の国にこの制度のあること自体が,何よりその必要性を物語っているにも係わらず,我が国には欠落しています.
 必須の制度なのに欠けているので,現実には,有事になると元自衛官に声を掛けて再志願してもらうしかありません.現実の有事計画もそうなっています.
 つまり強制ではなくて,「義をみてせざるは勇無きなり」に期待する「お願い」でしかありません.

 ですから,この特別昇任には「有事にはこの階級で戻ってきて下さい」の意味が込められているのです.
 なお,現役の将官の特別昇任はありません.

 一部官僚への役得タタキと一緒くたにされるとは,本当に心外ですね.

(元海将補)

 国の継戦能力を支える最も重要な基盤は,現役の人的損害を補充するための予備役制度です.
 しかし,我が国社会の軍事教育や訓練は現在,全くのゼロですから,予備役制度は事実上存在しないといえます.
 それに近い形が予備自衛官制度ですが,元海将補様の投稿にもあるように,「元自衛官が事実上ボランティアで登録している」というのが,我が国の予備自衛官制度の実態です.

 有事の際に国が「組織的な防衛能力」を継続する力を,「継戦能力」といいます.
 優先順位に基いて具体的にいいますと,予備役の確保,作戦資材(燃料や弾薬)の備蓄・集積・輸送能力の保持を意味します.
 広いくくりでいえば「民間防衛,通信・交通網の整備確保,損害発生時の復旧能力」など,緊急時の国家の危機管理体制も含まれます.

 諸外国と比べてわが自衛隊では,弾薬の保有量も少なく,人的側面にあたる予備要員(予備自衛官・即応予備自衛官・予備自衛官補)は総計でわずか50000名程度というお粗末な状況で,そのうえ予備自衛官補にいたっては防衛招集の対象外です.
 防衛招集の対象となる予備自衛官は後方支援任務につき,前線に出る資格があるのは退役幹部と即応予備自衛官です.
 しかし,マンパワーとして最も重要といえる即自の体制は今後7000名体制へと半減することになっています.
 ちなみに近隣某国では,予備役は100万を超えています.

 諸外国で予備役といえば,即応予備役が普通といわれています.
 訓練期間も当然多いわけですが,これには民間の「予備役制度の重要性と練度維持のための訓練」に対する理解と協力が不可欠です.
 しかし,今の日本社会では,訓練のため会社を休む予備自・即自への理解が少なく,彼らおよびその家族に対する生活保証が全く与えられていません.
 国防に対する社会の成熟度が普通の国と我が国とでは全く違います.

 勘違いしている人が多いようですが,日米同盟は日本を守るための軍事同盟ではありません.あくまで国家戦略上必要な大国とのつながりであり,米にとっては「日本にある米権益を守る」というのが日米同盟の意義にすぎません.
 日本が攻撃されたから直ちに米軍が駆けつけてくれる,ということは「絶対に」ありません.
 あくまで,独立国家日本の軍である自衛隊が非常事態に対処するのです.
 重要なのは,この段階でいとも簡単に戦闘能力が麻痺するようでは,周辺国に対する抑止効果に甚大な影響が出ることです.

 ちなみに隣国では,アヘン戦争で継戦能力の実態を世界に暴露して以降,「眠れる獅子」としての軍事的抑止効果はなくなりました.
 それ以降世界各国は,われ先にと軍事恫喝を加えて権益を獲得し,かの国は植民地になってしまいました.

 我が国の継戦能力が低いと判断された場合,最悪,「こんな国守る必要があるのか?」と同盟国である米にまで疑念を持たれ,米軍の支援を受けること能わず,ということも想定されます.
 周辺国の対日政策も根本的に変化するでしょう.

 継戦能力を筆頭で担保する「予備役制度」はことほど左様に重要なのです.
 社会風土が「コスト計算,金儲けにしか目が届かない人たち」ばかりで予備役を養う余地がないのならば,税金で予備自衛官や予備補,即自そしてその家族の生活保障をしてでも予備役制度を定着させる必要があると考えます.
 自分の国は自分で守るのだという気概のなさ,予備役・軍事に関する民間の無知,国家に対する意識の成熟度が十分ではない社会,を如実に示す鏡が,予備役制度の実態であると考える次第です.
 自衛隊には就職できないが,国を守るためなら喜んで軍事教育・訓練を受けたい,という若者は多数いると思います.
 予備役制度で,彼らの受け皿を制度として作り出すことも大切と思います.

 【参考】
「防衛問題の基礎知識」(防衛問題研究会編 H8)

以上,おきらく軍事研究会


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