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◆◆イランの核問題
<◆中東のWMD問題
中近東FAQ目次


核保有国になったことを祝うイラン国民の図
(Sharq紙,2006/4/12)


 【link】

「Al Jazeera」◆(2011/05/15)'Iran, North Korea trade missile technology'

「IISS」:03 Nov 2009 - - Bloomberg - Iran’s Military Power Subject to New U.S. Study Used for China

「IISS」:02 Nov 2009 - - Fars News Agency - US Official: IAEA Guarantees Delivery of Fuel to Iran

「IISS」:31 Oct 2009 - - Reuters - Senior Iran MPs Reject U.N. Atom Fuel Plan

「Jerusalem Post」◆(2011/01/04)WikiLeaks: Iranian hard-liners blocked nuclear deal

「VOR」◆(2013/04/09) イラン,原発付近でマグニチュード6.3の地震

「WP」◆(2010.2.7)Defense secretary Robert M. Gates skeptical of Iran's claims about nuclear deal


 【質問】
 イランの核計画が核兵器の獲得を目指していると見なされる根拠は何か?

 【回答】
 専門家は三つの要因を挙げている.
 第一は,イランが建設している核施設は,核開発を目指す国が建てる典型的な施設であること.
 第二に,イランは自国の核計画の一部を秘密にし,活動内容を適切にIAEAに報告していないこと.
 第三に,世界で六番目に大きな規模の石油資源を持つイランにとって,核電力施設を建設することは合理的な根拠に乏しいこと.

("Foreign Affairs")

 イスラエル国防軍の分析では,イランは秘密裏に核兵器開発を継続しており,2年以内に核兵器を完成させる可能性がある,という.

(エルサレム・ポスト,2004/11/21)

 なお,英国際戦略研究所は国際軍事年鑑「ミリタリー・バランス05〜06」の中で,イランの核開発計画と中国の急速な軍備拡張に,周辺各国が懸念していると指摘,
「最も緊張した状態なのがイランだ」
と結論づけている.

 ソースは毎日新聞,2005/10/25より.

 【関連リンク】
「Global Security」:THE IRAN A-BOMB SCAM


 【質問】
 イランが原子力発電計画を実施することに,法的問題はないのか?

 【回答】
 問題はない.
 イランも参加している1970年の核不拡散条約(NPT)によれば,平和的利用とIAEAの査察・保障措置を受け入れる限りは,核燃料生産のためにウラン濃縮化施設を含む核施設を建設することは認められている.

("Foreign Affairs")


 【質問】
 イラン側は,どのような方法によって自国の核開発の透明性を保障すると主張しているのか?

 【回答】
 ウラン濃縮プロジェクトへ外国企業を参入させることによって,透明性が最大限保たれると主張している.
 以下引用.

イラン,ウラン濃縮への外国企業参入計画を採択

 イラン政府は,ウラン濃縮プロジェクトへの外国企業の参入を,イラン原子力機構が具体的に制定するという計画を採択しました.
 イランでの5日の報道によりますと,この計画は2日の閣議に採択されたもので,アハメディ・ネジャド大統領が9月17日国連第60回総会で提案していたものです.
 その際,アハメディ・ネジャド大統領は
「これは,イランのウラン濃縮計画の透明性を最大限保ち,イランの原子力活動が軍事的目的に使われないことを保障するためのものだ」
と述べました.

http://jp.chinabroadcast.cn/151/2005/11/06/1@51646.htm


 【質問】
 イランはあとどのくらいで核兵器を製造できるか?

 【回答】
 英国のシンクタンク「国際戦略研究所」が2005/10/6日に発表した報告書「イランの戦略兵器プログラム」によれば,イラン南部ナタンツのウラン濃縮施設で1000台の遠心分離機を最適条件下で稼動させた場合,約2年半で高濃縮ウラン25キロの製造が可能としています.
 ウラン25キロというのは,核兵器ひとつの製造に必要とされている量です.

 現実には,この倍の年月が必要と結論付けていますが,
 チップマン所長は,技術的問題や国際社会の圧力などで,「製造までには約15年かかる可能性のほうがより高い」との見方を示しています.

(おきらく軍事研究会)


 【質問】
「イラン核武装のプラス面」
 プラス面は本当にあるの?

 【回答】
 現在の状況を冷静に評価するのであれば,イランには核武装に向かっている兆候はあるが,ミッシングリングが存在するために,「その核武装に掛ける意志」には最大限の警戒と処置が必要であるが,それ以上でもない,というのが私個人の見立てです.
 もちろん,私個人の日記などでも日頃から述べているとおり,私個人の核不拡散・平和利用の厳守の絶対原則からして,そのようなイランの態度は全く相容れないところ.

 ただ,よく言われるように
「最悪を想定して,楽観的に行動する」
ことがここでも重要でしょうし,核武装の最も効果があるブラフとしての効果を根底から覆し,それを政治的に無力化する(逆に利用する)狡猾さはあってしかるべきでしょう.
<それにしてはご紹介の議論はあまりにも楽観的に過ぎて,核拡散リスクを過小評価したものと個人的には評価しますが.

 以上より,平和裏のうちに採ることが出来る全ての方法を動員して,イランの核武装恫喝を無力化することが重要であり,それがある意味,極限まで高まっている危機から脱する道だと考えます.

へぼ担当 in mixi,2010年02月26日 00:10

Geopolitical Diary: Talk of More U.S.-Iranian Talks
October 08, 2007 02 00 GMT

では,イランが核爆弾開発を諦める可能性は無いわけではないけれど,バーゲニング・パワーとして それを最大限に活用したいのだ,という見方をしている.
 以下引用.

――――――
However, the nuclear issue is still on the table.
Bush wants to discuss Iraq with the Iranians, but only after their nuclear weapons program is shut down.
The Iranians have no intention of abandoning their program prior to the negotiations.
While we do think they would be prepared to shut it down in the long run, they will want to use it as a bargaining tool to extract maximum concessions from the United States before letting go of it.
There is no way they would consider shutting down the program prior to talks.
――――――

ニュース極東板
青文字:加筆改修部分


 【質問】

――――――
イランの重水炉「ほぼ完成」 IAEA査察官が確認
朝日新聞,2009/08/21


 【ウィーン=玉川透】国際原子力機関(IAEA)の外交筋は20日,IAEA査察官が先週,イラン中部のアラクで建設が進んでいる4万キロワット級の実験用重水炉を約1年ぶりに査察し,施設がほぼ完成していることを確認したことを明らかにした.

 重水炉は一般の軽水炉に比べ,核兵器に転用可能なプルトニウムを抽出しやすいとされる.
 国連安保理はイランに重水炉の建設停止を求めているが,イランは従わず,昨年8月以降はIAEAの査察も拒否していた.
 イランのアフマディネジャド大統領は06年,「3年以内に完成させる」としたが,IAEAは11年にずれ込むと見ていた.

 イランは今回,同国中部ナタンズのウラン濃縮施設についても,IAEAの求めに応じて査察の範囲を拡大することに合意しているという.
 〔略〕
――――――

 イランの核武装は,もう阻止不可能ですか?

 【回答】
 ここまで来ると,次の焦点は「重水は何処が供給するか」と言うことに移ります.

 ウランの方は欧米諸国から圧力がかかっても,天然ウランであれば何とか入手可能.
 重水炉では天然ウランでも核燃料として使用可能のため,昨今取りざたされているウラン濃縮能力とはまた別次元の問題となります.
 一方,重水の方は供給できる国が極めて限られているため,火中の栗を拾うのは誰なのか?
 それとも何らかの密輸ルートを採るのか,核不拡散上では大きな問題となることが指摘できます.
 
 今後は国際社会からの圧力とIAEAからの監視の下,イランがどのような行動に出るのか,厳しい目で見ていかなければならないと考えますが,今後の成り行きが注目されるところでもあります.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2009年08月21日22:13


 【質問】
 2010.2.23,日本メディアに公開された,テヘランの研究炉はどんなものか?

 【回答】
 運転責任者モルテザ・ガリブによると,研究炉は革命前の1967年にテヘラン大学の構内で稼働を開始.
 現在は原子力庁の敷地内に移されている.
 医療用アイソトープを生産しているという.
 出力は最高5千キロワット.
 国際原子力機関(IAEA)の査察官を年4回受け入れている.

 研究炉用燃料は,来年には底をつく見込みで,生産を継続するのは百数十キロが必要とされる.
 イランにはウラン濃縮技術はあるが,現時点では板状の燃料を成形する技術はないとみられ,これまではアルゼンチンからの購入に依存していた.
 しかしイラン側は自前で燃料を製造するとして,ウランの濃縮度を20%に上げる作業を始めたため,核兵器への転用を疑う国際社会の反発を受けている.

 【参考ページ】
2010/02/23,朝日新聞(テヘラン=北川学)
2010/02/23,産経新聞
2010年2月22日21時44分,読売新聞(テヘラン=石黒穣)
2010年2月23日11時58分,読売新聞(テヘラン=石黒穣)

「最低限だが信頼醸成は地道な積み重ねから」
というところ.

 核不拡散・平和利用を絶対原則とする私個人の立場からすれば,核を弄ぶ現在のイランの姿勢は絶対に容認できない.
 しかし,イランに実際に研究炉が存在し,原発が稼働しようとしている中で,核の軍事利用を阻止し,核不拡散を計り,ひいては中東地域の安定を図ることが,日本の将来の命運を握っているのも事実.

 そのためには現在も核不拡散とは相容れない措置が続き,大変遺憾ながらも,このような当該研究炉の公開など,管理された状況下にある中とはいえ,最低限ではあるものの信頼醸成のための細い糸はまだ切れていないところに,何とか希望を見いだしたいところ.

 もちろん,イランの現政権の姿勢は絶対に容認できるものではないことは言うまでもない.
 しかし,欧米諸国のような強行一辺倒だけではなく,独自のチャンネルを持つ日本がイランをありとあらゆる方法で平和的な利用に向かうよう誘導すること.
 そして,核武装と核武装放棄のメリットとどちらが大きいか,十分に,かつ地道に知らしめることが必要であり,私個人のような専門従事者の在り方が問われているものと考えます.

 皆さんは如何お考えでしょうか.

へぼ担当 in mixi,2010年02月25日21:08


 【質問】
 イランが保有する遠心分離機の数は?

 【回答】
 2007/7/26,イランのアハマディネジャド大統領は演説の席で,ウラン濃縮用の遠心分離機の数を
「五〇〇〇から六〇〇〇基保有している」
と述べています.

 ナタンツの核施設で組み立てた約三〇〇〇基の遠心分離機は,一年から一年半で兵器クラスの高濃縮ウラン製造ができるとされます.
 しかし,五〇〇〇基以上の遠心分離機が稼動して濃縮が拡大すれば,その期間は大幅に短縮されます.

 四月にアハマディネジャド大統領は,ナタンツの核施設に設置されている遠心分離機を三〇〇〇基から増設する方針を表明しています.
 そのときある専門家は
「今年の夏の終わりまでにあわせて六〇〇〇基に増設することは可能」
と述べていました.

 北鮮もそうですが,イランもあらかじめアナウンスした上で,そのとおりのことを実行しています.
 国際社会の善意や核協議の実態,専門家の憶測をとことん利用しつくして,おいしいところを全部奪い尽くす,との意図を感じます.

 アハマディネジャド大統領は
「EUも今や五〜六〇〇〇基による濃縮継続を認めている」
と述べており,欧米との間で「制裁するかしないか」を話し合っている間,ずっとウラン濃縮の既成事実を積み重ねていたことが判明したわけです.
 北鮮のやり口を見習っているのでしょう.
 イランと北鮮は同じ経過を辿るように思います.

 戦はいやだ,戦は怖い,争い事は嫌い,という類の戦にビビる人は,こういう相手の格好のエサとして利用され,ケツの毛まで毟り取られて放り出されるのがオチです.

おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)8月4日


 【質問】
 核弾頭運搬手段の開発は,イランにおいてはどうなっているのか?

 【回答】
 報道によれば,着々と進んでいる模様.
 2005/6/1には,中東の大部分に到達できる シハブ3型ミサイルの性能をさらに向上させた,新型固体燃料ロケットの実験に成功.
 また,巡航ミサイルのコピーにも乗り出しているという.

ウクライナから購入の巡航ミサイルの複製,最終段階に

 イランの軍事動向に詳しい米シンクタンク,戦略政策コンサルティングのアリレザ・ジャファルザデク所長は26日,ワシントン市内で記者会見し,イランがウクライナから購入した巡航ミサイルKh55(射程約3000キロ)を配備するとともに,複製にも成功しつつあるとの情報を明らかにした.
 Kh55は欧州を射程に収め,核弾頭の搭載も可能.
 ジャファルザデク所長が独自に得た情報によれば,イラン国防省の巡航ミサイル技術担当者は最近開かれた同国最高安全保障委員会(SNSC)の席上,Kh55の複製作業が「最終段階にある」と報告したという.

(時事通信社,2005/8/27)


 【質問】
 イランのミサイル技術は,どの国のものが元になっているのか?

 【回答】
 報道によれば,北韓(北朝鮮)のものであるという.
 以下引用.

イラン,北のミサイル技術入手元露軍人が交渉仲介 英紙報道

 【ロンドン=蔭山実】イランのミサイルの開発をめぐり十六日付の英日曜紙サンデー・テレグラフは,ロシアの元軍人が北朝鮮とイランの仲介役を務め,イランから欧州までが射程に入る中距離ミサイルの開発を支援していたと伝えた.
 イランのミサイルに北朝鮮の技術が使われているとの指摘はこれまでにもあったが,ロシアの元軍人の関与が明るみに出るのは初めてという.
 同紙によると,元軍人は二〇〇三年にイランと北朝鮮の間で行われていた交渉を仲介.この結果,イランはロシアを通じて,米国の西海岸まで届くとされる北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン2号」などの技術を極秘に入手したという.
 イランのミサイルは,北朝鮮の「ノドン」を基に,イスラエルまで届く射程約千三百キロの「シャハブ3」を開発したが,新たな技術によってイタリアからドイツ,フランスまで届く,射程約三千五百キロで核弾頭も搭載できるミサイルの開発が可能になったとされる.
 ロシアはこうしたミサイルの開発で製造施設や部品,技術をイランに供与していたほか,イランが十年後に導入を目指している新型ミサイルの開発支援に専門の技術者を派遣しているという.
 イランのミサイル開発は同国の核開発とも関連しており,同紙は,ある米高官が
「イランの核開発は高度で,規模は大きく,中身の精度も増している.
 その最大の狙いは核弾頭だ.
 プーチン大統領はイランが何をしているかを知っている」
と語ったとも報じた.

(産経新聞,2005/10/17)

 今後,ロシアが何らかの釈明を求められる事態も想定される.

(共同通信,2005/10/16)


 【質問】
 北韓(北朝鮮)はイランの長距離ミサイル開発に,どう協力しているのか?

 【回答】
 朝鮮労働党傘下の企業を通じ,部品輸出を行っているという.
 その総計は18基になるという.

 以下引用.

北朝鮮→イラン,ミサイル取引急ぐ 狭まる包囲網,部品提供を協議

 【ワシントン=有元隆志】北朝鮮からイランへのミサイル拡散に対する国際的な監視が厳しくなるなか,制裁が発動される前に,両国が地対地ミサイルの取引を急ピッチで進めようとしている−との見方が専門家の間で広まっている.
 大量破壊兵器拡散に詳しいワシントンの情報筋は産経新聞に対し,北朝鮮のミサイル輸出企業の代表がミサイル部品提供について協議するため,十月後半にイランを訪れたと指摘した.
 北朝鮮企業の名前は,チャングァン信用社.
 同社は北朝鮮の朝鮮労働党内で軍需物資調達を担当する「第二経済委員会」傘下の企業で,中東向けミサイル輸出の中心的な存在.米国は,たびたび同社に制裁を科してきた.
 詳細は明らかではないが,同筋は,訪問の目的を「イランがミサイル開発に必要なミサイルの部品や予備部品などのリストを提示するため」と指摘した.また,イランの反体制派活動家ジャファルザデ氏も,二十一日のワシントン市内での記者会見で,「イランが(ミサイル開発などを)加速している」などと語った.
 ジャファルザデ氏はイランが北朝鮮の協力を得て,テヘラン近郊に核弾頭搭載可能なミサイルを隠すための秘密トンネル建設を進め,そこでミサイル開発を行っていることなどを挙げ,「北朝鮮の専門家はイラン国内のいくつもの施設に姿を現している.北朝鮮の関与は核計画からミサイルまで広範囲に及ぶ」と強調した.

 北朝鮮がイランとの接触を重ねている背景には,米国が北朝鮮によるミサイル輸出などへの監視を強化していることが挙げられる.
 十月二十四日付の米紙ニューヨーク・タイムズは,米政府が中国や中央アジア諸国に対し,北朝鮮を飛び立った不審な航空機の領空通過を認めないよう求めていると報じたが,米政府は六月にイラン貨物機が北朝鮮に着陸したのを米偵察衛星が確認して以降,働きかけを強めているという.
 また,九月の第四回六カ国協議で,北朝鮮が核廃棄を確約した共同声明が採択されたほか,イランの核開発についても,国際原子力機関(IAEA)で論議が続くなど,両国に対する国際的圧力が増していることも,調達を急ぐ要因となっているとみられる.

 イランの中距離弾道ミサイル「シャハブ3」は,北朝鮮の「ノドン」をもとに開発したとされている.
 イランは日本などとの協議で,北朝鮮とミサイル開発での協力関係は「ない」と否定している.

産経新聞 11月24日02:28

 その総計は18基になるという.
 以下引用.

「北朝鮮のイランへのミサイル供給事実を確認」ロイター

 【ワシントン6日聯合】北朝鮮がイランに対し,射程距離約2500キロメートルのBM5移動ミサイル18基を分解した状態で供給した事実が確認されたと,ロイター通信が6日伝えた.
 これは,昨年12月にドイツの一部のマスコミが初めて報じたのを受け,ドイツが独自に情報を入手し,報道を事実として先月公式確認したもの.
 ロイターは「イランは西側の懸念を無視し,核プログラムを稼動し核兵器生産の道を突き進む一方,核弾頭を運搬できるミサイル開発に拍車をかけている」と述べた.

聯合ニュース 2006/03/07/09:06

 これに先立ってアメリカの「USニュース・アンド・ワールドリポート」も去年12月,北韓がイランに対し,イスラエルやトルコまで攻撃可能なBM−25型ロケット18基を輸出したと報じています.

KBS韓国国営 2006-03-07-16:19


 【質問】
 「サフィール」ロケット打ち上げについて教えてください.

 【回答】
 2008/8/17のイラン各メディアは,宇宙ロケット「サフィール」打ち上げに成功したと発表しました.
 打ち上げは国防軍需省が実施し,アハマディネジャド大統領も立ち会っています.
 しかし打ち上げ後,搭載した衛星に不具合が発生したようで,衛星が軌道に乗ったかどうかは不明です.

 ⇒国産ロケットと言っていますが,怪しい限りです.
 イランは今年2月に初めて「国産」ロケットを打ち上げています.
 そのとき「夏にも打ち上げる」と表明していました.

おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)8月25日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 アフマディネジャドの核戦略は?

 【回答】
 イランの一方的な行為を国際社会に押し付け,同意を強いるのがアフマディネジャドの戦法であり,同時にこれはハメネイへの挑戦であるという.
 以下引用.

 この問題をめぐる原理主義軍国主義派閥と比較的プラグマティックな保守派閥の緊張とギャップは一層厳しく,また際立っている.

 イラン指導部は保守派も改革派も核開発計画に熱狂的だ.
 イランは2005年8月あらゆる濃縮関連活動を凍結するという,国際社会への約束を破った.
 以来,イランは欧州との危機に計画的に,またコントロールしながら対応してきた.欧州と世界が折れ,イランの条件を漸次受け入れる状態に持っていくことが(当面の)狙いだった.
 (最終の)目標は,イランが(核兵器の開発と生産を可能にする)核燃料サイクルを獲得でき,それを国際社会に既成事実として受け入れさせることだった.

 アフマディネジャドはこれまでの大統領たちと違い,欧州および国際社会との抗争を,たとえイランがその抗争によって高い代償を支払わねばならないとしても,恐れない.
 イランの一方的な行為を国際社会に押し付け,同意を強いるのがアフマディネジャドの戦法だ.

 アフマディネジャドは,欧州との交渉で妥協の意向は見せていない.彼の声明は他のイラン高官と同様,イランが抗争に向かっていることを明示している.
 イランと欧州との交渉は,さる8月イランがイスファハンでウラン転換を再開したことで崩壊した,
 アフマディネジャドらイラン高官は,欧州との交渉を継続する用意があると主張する.
 しかし(イランの核開発問題は)もはや交渉の対象にはならないとも断言する.
 また,欧州がイランの核燃料サイクルの要求を拒否するなら,イランには実際のウラン濃縮を自らのイニシアチブで再開する権利があり,ナタンズの遠心分離機工場で作業を再開する権利があると主張する.
 また,イランに対して考えられる懲罰手段はなんであれ,イランを害する以上に欧州と米国自身を害するとも主張する.※23

 こうした経緯からイランは欧州の最近の提案を拒否した.明らかに米国の支持を取り付けた提案だった.
 イランは国内で初期段階のウラン濃縮はできるものの,ほとんどの濃縮は国際機関の監視下ロシア国内で行われるとの内容だった.※24

 イランは過去2年間穏健で,あたりさわりのない瀬戸際政策を取ってきた.
 これは,イランの実用主義的な派閥,つまりハタミ大統領下のイラン外務省の政策だったが,原理主義保守主義者の一部,とりわけ超保守主義の日刊紙ケイハンから激しい批判を浴びてきた.
 原理主義者たちは,欧州との交渉においてイランは厳格であるべきで,また妥協すべきではないと主張する.
 さらに,原理主義者たちは欧州との核対話の道が果たして賢明かどうか疑い,過激な一方的な措置すら要求した.※25

 現在イランの核政策を形作るポジションにあるアフマディネジャドは,約40人の大使を解任した.
 これは,外務省内の改革思考派に対する追放措置の一部と見なされている.※26
 また,このアフマディネジャドの措置,とりわけ欧州とアジアにおけるイランの枢要な大使の解任は,ラフサンジャニと「公益判別評議会」の権限増強への挑戦であり,結局のところはイランの核政策問題の最終決定者であるハメネイ自身の政策に対する批判と見なされる.※27

 ロンドンの日刊紙アル・ハヤートの記事によると,アフマディネジャドは解任の前,大使たちと会った.
 この際,自分は欧州人を信用していない,2004年11月イランと欧州の間で調印されたパリ合意は「帝国主義的政策を持つ」ものだと語った.
 欧州はイランの立場を受け入れねばならず,もし受け入れないなら「我々は,彼らの扱い方を知ることになろう」と語ったという.

 また,この記事によると,大使たちはこう主張したという.
「欧州連合(EU)はイランと事を構えることを望んでいない.EUは,近代的な核技術を獲得するイランの権利を尊重している.また,パリ合意は(イランとEU間の)漸進的な信頼醸成を切望する内容だ」
と語った.
 しかし,アフマディネジャドは大使たちの主張を拒絶し,欧州は「自分自身が人権を尊重していないのに」人権問題に基づく教訓をイランに教えようとしていると語った.※28

A.サビヨン from MEMRI,2005/11/25

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 イランの宗教指導者は,核兵器使用に付いてどのような見解を持っているのか?

 【回答】
 イランの改革派インターネット日刊紙によれば,イランの超保守派の宗教指導者たちは,シャリーア(イスラム法)の見るところでは核兵器の使用は合法だ,とする見解を持っているという.
 以下引用.

 2006年2月16日,改革派の日刊紙ルーズ(www.roozonline.com)は(イランの宗教都市)コム出身の過激派聖職者が,同紙が「新しいファトワ」と呼ぶものを発出したと初めて報じた.このファトワは「シャリーアは核兵器の使用を禁じない」と述べている.

 以下は,ルーズが掲載したシャフラム・ラフィザデShahram Rafizadehの記事の抜粋である.※1

「全世界が核兵器で武装している時,対抗(手段)として,これら兵器の使用が許される」

「(イランの)超保守派の宗教指導者たちは,シャリーア(イスラム法)の見るところでは核兵器の使用は合法だと受け止めた.
 (アフマディネジャド・イランAhmadinejad大統領の宗教上の師である)(アヤトラ)メスバハ・ヤズディMesbah Yazdiの弟子モフセン・ガラビアンMohsen Gharavianは,対抗手段としての核兵器の使用に初めて言及した.彼は『シャリーアの見地から,それは(核兵器を使う)目標次第である』と述べた」
「これについて(イランの)イスラム共和国の指導部は,これまでのところ沈黙している.
 彼らは現在まで,核兵器の使用はシャリーアに反すると見なしてきたし,繰り返しそう言明してきた,
 過去数週間,イスラム共和国の一部上級(指導者は)急進的な(保守派)から受ける圧力を弱めようと試みた.
 しかし,その事実にもかかわらず,急進派は(イラン)政界を完全にコントロールしているように見える.

「(国際原子力委員会=IAEA)理事会が(イラン核問題の国連安保理への付託を)決議して以来,(イランの)核問題を担当する(国家安全保障会議事務局長)アリ・ラリジャニAli Larijaniは一度しか記者会見を行っていない.彼の沈黙は重要である.※2
 しかし,昨日,イラン国営通信はモフセン・ガラビアンの核問題に関する最近の発言を報道した.
 ガラビアンは(イランの宗教都市)コムの神学校の講師であり,(アヤトラ)メスバハ・ヤズディの弟子である.
 彼は最近の発言で,シャリーアに従えば核兵器の使用は問題を構成しないかもしれないと初めて述べた.
 彼はさらに
『全世界が核兵器で武装している時,対抗(手段)として核兵器を使用することは許される.
 また,シャリーアに従えば,目標だけが重要だ・・・』
と述べた.
「(ガラビアンは)核兵器の軍事使用に問題はないと見ていると述べた(原文のまま):
『こう言わねばならない.当然しごくなことだが.全世界が核兵器で武装している時,対抗手段として,これらの兵器を使用することができることは必要である,と.
 しかし,重要なことは,それが使用される目標が何かだ』

「イランの超(保守派は)これらの兵器使用のための根拠を準備する新たな努力を開始した」

「政府に近いこの聖職者はまた,核交渉と,同交渉の将来の諸段階に言及した.彼はイラン核問題の(安保理への)ーー『付託』ではなくーー『報告』は言葉の意味をもて遊んでいるとし,
『イランのイスラム共和国政権に圧力を掛ける西側の主要な目標は恐怖を引き起こすことだった.
 しかし,我々はヨーロッパとアメリカの将来の態度の成り行きを見て.それから最善の決定を下す』
と語った.

「ガラビアンの声明は(アヤトラ)メスバハ・ヤズディのグループによる核問題に関する最初の公の声明である.
 今まで,最高位の宗教(指導者)は誰も,宗教上の根拠に基づく核兵器の使用は認めなかった.
 しかし,今や,イランの超(保守派)はこれら兵器の使用のための宗教的根拠を準備する新たな努力を開始したように見える.

 〔略〕

(1)http://r0ozonline.com/01newsstory/014094.shtml.

注目されるのは,日刊紙ルーズがイラン外部から投稿され,インターネットフォーマットでしか入手できないことだ.

(2)メムリ・テレビ・クリップ No.1029

MEMRI,2006/2/20

 ただし,ソースがソースであるだけに,バイアス注意.


 【質問】
 ナタンツ山中の非公開核施設について教えられたし.

 【回答】
イラン核施設の写真を公開 米シンクタンク
2007年7月10日10時50分,共同通信

という記事によれば2007.7.9,米シンクタンク,科学国際安全保障研究所衛星写真と共に発表したもので,イランが中部ナタンツのウラン濃縮施設に近い山腹にトンネルを掘り,何らかの施設を新たに造っていると推定されるという.
 写真は6月11日に撮影されたもので,核施設の南側に長さ2キロ前後の2本の道路が敷設され,いずれも山の中腹で途切れているように見える.
 別の写真には,土砂の集積場や,多数のトラックが写っている.

 ↓はロイターの記事.
Reuters/ISIS, DigitalGlobe (写真アリ)
Iran tunnel photos worry US officials
By Joby Warrick, Los Angeles Times-Washington Post News Service
Published: July 10, 2007, 00:15


 ISISの発表した報告書は↓
http://www.isis-online.org/publications/iran/IranNatanzTunnels.pdf
New Tunnel Construction at Mountain Adjacent to the Natanz Enrichment Complex
Iran should allow IAEA inspections of tunnel facility
David Albright and Paul Brannan The Institute for Science and International
Security (ISIS) July 9, 2007

 報告書(PDF,5ページ,写真と解説)は割合わかりやすい説明をしている.

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Figure 2. Construction activity appears related to the building of a tunnel complex.
Soil and rock dumps are identifiable. Tunnel entrances are not visible, but they could be at or near the end the end of the road in the upper left section of the image A fenced, apparently secured area, is visible adjacent to the road just past the first set of construction support buildings. This area could store high explosives used in tunneling.
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ニュース極東板,2007/07/10(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
イランに第2の核施設,IAEAに報告 米英仏が非難
朝日 国際 09/26取得 元記事
http://www.asahi.com/international/update/0925/TKY200909250381.html
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イラン大統領,「核施設は法に従って建設」 批判に反論
朝日 国際 09/26取得 元記事
http://www.asahi.com/international/update/0926/TKY200909260006.html
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 「法に従って建設」されているので問題はないの?

 【回答】
「受けることに関して何の問題もない.何も恐れていない」
のであれば,
「速やかに何の条件も課さずに,完全なる査察を受け入れよ.
 貴国の今までの行動は全く信用できず,今後とも厳重な査察が必要であり,『何の問題もない』ことを全世界に明らかにするまで,徹底的に査察に協力し,一切の妨害を止めよ!」
というのが正直なところ.

 現在のイランのアフマディネジャド政権下では,これら問題を外交材料とする極めて由々しき態度に出ており,元々IAEA加盟諸国に認められている平和利用の権利を脅かしかねない状況にあります.
 これは原子力の平和利用に専念し,推進する日本にとっても,それら努力に水を差しかねない好戦的な態度であり,極めて由々しき問題と考えます.
「受けることに関して何の問題もない.」
というのが,極めて空疎に響く状況ではありますが,昨今のロシアの姿勢の変化もあり,今後に目が離せないところ.
 個人的にはこれら問題が解決されるまで,徹底的な国際圧力をかけるべきであり,これら問題に対するアフマディネジャド政権の対応の,抜本的な転換を非常に強く要求するところです.

2009年09月26日 08:08,へぼ担当

不肖宮嶋閣下,正論を語ってます.
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090917/stt0909170746012-n1.htm

イランと言えばこの記事を思い出しますな.
http://obiekt.seesaa.net/article/120728553.html

2009年09月26日 08:35,バルセロニスタの一人

 まともに相手にするだけ無駄,とは十分に分かっているのですが,ならば奥から手を回してカタカタ言わせるぐらいに締め上げ,石油権益確保など利用するところは利用しつくして捨てる,で十分かと考えます.それがあの国の選択でもありますから.
 ちなみに私の分野では全面協力まで徹底制裁あるのみ.裏交渉は別として表面では融和は絶対に許さず.欧米諸国にて徹底的な圧力を加える(絶対に関わりを持たず,許容しない),との立場です.
 核不拡散の分野ではその意味,非常に厳格なところです.

2009年09月26日 10:01,へぼ担当

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 以下のような,日本に対するイランの非難や要求は,妥当なものなのか?

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IAEA:イラン演説,日本に核報告要求
毎日新聞 2010年9月16日 東京夕刊


 【ウィーン樋口直樹,テヘラン鵜塚健】ウィーンで開かれている国際原子力機関(IAEA)の定例理事会で,イランのソルタニエ大使は15日,日本の核能力を危険視する演説を行い,天野之弥事務局長に対し,日本が保有する核物質の量や貯蔵場所を次回の理事会に報告するよう要請した.

 ソルタニエ氏は演説で,日本のプルトニウムや濃縮ウランについて「重大な懸案だ」と指摘.これに対する「日本政府の十分な説明と正当化」が必要との持論を展開した.

 〔略〕
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イランが日本批判 厳しいIAEA天野氏に腹いせ?
朝日 国際 09/16取得 元記事

 【ウィーン=玉川透】
 〔略〕
 イランのソルタニエIAEA担当大使は,同日の演説で「日本が保有する大量のプルトニウムや高濃縮ウランは深刻な懸念だ」と,日本を名指しで非難.
 12月の次回理事会で,日本の原子力施設に対するIAEAの査察状況や保有する核物質の正確な量を報告するよう,天野氏に求めた.

 〔略〕
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イラン,異例の日本非難 IAEA理事会
産経 国際 09/16取得 元記事


 イランは15日の国際原子力機関(IAEA)の定例理事会で,日本の原子力技術や核物質の保管態勢に「深刻な懸念」を表明,IAEAが日本国内の原子力施設で行う保障措置(査察)の詳細について,12月の次回理事会で報告するよう天野之弥事務局長に求めた.
 〔略〕
 イランのソルタニエIAEA担当大使は15日の記者会見で,日本に「大量のプルトニウムや高濃縮ウランが備蓄されている」と強調.
 「日本はウラン濃縮活動を大規模に行っているが国際社会は何も言わず,不公平だ」と述べ,保障措置の実施状況のほか,日本国内の核物質の保管場所やその正確な量を理事会に報告するよう求めた.(共同)
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イラン「日本の核は懸念材料」…天野氏に圧力?
2010年9月16日12時19分 読売新聞


 【ウィーン=柳沢亨之】当地で開催中の国際原子力機関(IAEA)理事会で15日,核開発疑惑を抱えるイランが日本のウラン濃縮やプルトニウム保有を「朝鮮半島や世界の安全保障上,懸念材料となっている」と激しく非難した.
 〔略〕
 イランのソルタニエIAEA担当大使は,日本が「拡散の危険性が高い核物質を備蓄している」と主張.12月の次期理事会で日本の核物質の量や場所を「正確に報告」するよう,天野事務局長に要求した.
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 【回答】
 イランの核開発問題ですが,「厳しいIAEA天野氏に腹いせ?(朝日新聞)」なのか,日本に対して報告要求をしたようで.

 今まで日本自体そのものは,ある程度欧米の強硬処置とは距離を置いて,静観してきました.
 しかし,核不拡散・セキュリティ関連など,私個人も様々な関与がある点まで苦し紛れにせよ手を出してきたとなると,それなりの対抗措置が執られることになります.
 そして,その準備(人的手段・知的財産含む)はありますが,イランにその覚悟はあるのか?と詰問したくなります.

 もちろん,日本の原子力施設や関連活動についても,統合保障措置に基づく査察がなされ,常時査察が入っている箇所もあります.
 その上で,その内容と共に「転用の恐れ無し」との評価が下っているわけであり,別段やましい点はありません.
 IAEA等が日本に関して蓄積している報告を,改めて出せと言われても,全く痛痒を感じませんし,だから何?というのが実際.
 もう既に提出され,検証され尽くされているもののため,それにイランが何を言ったとしても,いちゃもん以上の何物にもなり得ません.

 まあ,「プルトニウムや高濃縮ウランが備蓄されている」と言われても,プルトニウムはとにかくとして,「高濃縮ウランの備蓄」とは,どのようなギャグだ?と言いたくなります.
 そもそも,IAEAの定義における「高濃縮ウラン」とは何を指すのか,それが本当に分かっているのかどうか,それすらも怪しくなるレベル.
 また,実際にそれらの関連施設の中にあったとして,どのように用いられているのか,それを分かった上で言っているのかどうか,数十年ほど問い詰めてみたいところ.
 まともな知識が有れば大恥をかくだけですが,核を国威向上のために弄ぶ現在のイラン政府やソルタニエ大使には,それが分からないのでしょうね.

 少なくとも国際社会の公の場において,イランが日本に対して喧嘩を売ったことだけは間違いありません.そして対北朝鮮のように,それを生暖かく無視,もしくはしかるべき反論を行った上で,続けてIAEA等に報告すべきは報告し,イランに対してそれなりの措置が執られるよう,査察圧力を高めることになるでしょう.
 その意味においては,完全な逆効果.イラン自身の自爆と言えるでしょう.

 そして,日本国政府が保有すると言われる最終兵器(笑)「遺憾の意」が発動される日は近いのかも知れません.
 既に実際に行われている様々な処置(禁輸措置その他)が,諸外国と同等の「外交戦」のレベルに引き上げられる瞬間は近いのかも知れません.
 その意味では,イランのソルタニエ大使演説は,今まで抜かれることが決して無く,将来もないと信じられてきた「日本の外交戦」という伝家の宝刀を,抜いて発動させる号砲になる可能性があります.

 もしそうなった場合,短期的には原油価格高騰など,日本の受けるダメージの可能性も少なくありませんが,第2次世界大戦終結後の所謂「戦後レジューム」の中で活動してきた日本の,またもう一つの転換点になるのかも知れません.

 そう言っても,日本が軍事国家になることはまずあり得ません.

 しかし衰えたとしても,まだ残る経済力やその他影響力を,諸外国同等の狡猾に活用する「普通の国家」になることは十分にあり得ますし,外交等を「国際社会の善意」だけに頼るような今までの在り方から,少しずつでも変わっていく可能性,そしてその必要性が認識されるのかも知れません.
 そうなった場合,我々はどう行動すべきなのか,こちらの場合こそ存分の覚悟が必要かと愚考します.

 皆さんは如何お考えでしょうか.

へぼ担当 in mixi,2010年09月17日21:47

 味方に近い日本に,ケンカを売るセンスがすごいですなー

憑かれた大学隠棲 in mixi,2010年09月18日 00:09

 まあ,イランという国は,こと核が絡むと
「日本(政府)がイランに原発を提供するという密約をした11!」
と言う,日本人なら誰もが相手にしないような血迷い言をわめき散らすような国ですからね.
 そのため,その点の事情を知った人間からは全く相手にされず,
「御託は良いから,即座かつ完全な査察を受け入れよ.」
と包囲網が形成されている国です.

 普通,このような事態になれば,先進国と途上国との間に意見対立が起こるものであり,それに乗じて…という動きも過去にはありました.
 しかし,ことイランの核問題に関しては,次第にエスカレートするイランの電波度に他国がついて行けず,イランが孤立を深め,それに同調するのはごく僅かな国という為体.
 まあ,だからこそ苦し紛れの電波で,とうとう日本にも正面から喧嘩を売ったわけですが,イランにとって最良でも全面スルー.
 最悪の場合は,核不拡散で欧米と共に厳重な包囲網形成となる訳であり,イランにとって高い代償を払うことになるでしょうね.

 もっとも,その間に中国が火事場泥棒的に,イランの石油権益を握る可能性がありますが,それは別の長期間の問題.
 少なくとも,中国がイランの核関連冒険主義を擁護するまでの立場には回ることはないでしょう.※

へぼ担当 in mixi,2010年09月18日 00:45

 ※ ミャンマーに対する中国の姿勢を見ると,必ずしもそうとは言い切れないかもしれない.
 北韓の核兵器保有に関しても,どちらかといえば中国は擁護寄りであることだし.


 【質問】
 イランの核開発を,他の中東諸国はどう思っているのか?

 【回答】
 アラブ・メディアでは,多くのコラムニストが,イランの核開発を懸念し,反対の立場をとっている.
 一方,核開発を支持し,これでイランとイスラエルの核能力に対して国際社会はダブルスタンダードがとれなくなる,と主張する者や,イランに倣えと叫ぶ者もいるという.

 以下引用.

 はじめに

 2006年4月11日,イランが,ウラン濃縮に成功したと発表した.その発表はアラブのメディアに複雑な反応をひき起している.
 多くのコラムニストが,イランの核開発を懸念し,反対の立場をとっている.核武装のイランは,アラブ諸国全体特に湾岸諸国に脅威になるとし,この地域の軍拡競争に拍車をかける,と主張するのである.
 イランの核施設から放射能が漏出し,チェルノブイル級の重大な環境汚染をひき起す可能性あり,と論じるコラムニストもいる.
 更に,世界を潰滅しかねない新しいヒトラーの登場,と大統領アフマディネジャドを批判している者もいる.

 一方,イランの核開発を支持するコラムニストもいる.イスラエルに対する力のバランスを改善できるとし,これでイランとイスラエルの核能力に対して国際社会はダブルスタンダードがとれなくなる,と主張する.
 なかには,イランにならえと叫ぶコラムニストも何名かいる.核能力を身につけ,欧米と戦う武器にせよというのである.

 次に紹介するのは,イランの発表に対するアラブメディアのさまざまな反応である.

Tイランの核開発に対する批判と反対

   1.アフマディネジャド(新しいイランのヒトラー)世界に挑戦

 アメリカ在米のヨルダン人改革派アル・ナブルシ(Dr.ShakerAl-Nabulsi)は三本の記事を書き,イランの核開発と大統領アフマディネジャドを激しく攻撃した.
 最初の記事でアル・ナブルシは,アフマディネジャドをヒトラーになぞらえ,第三帝国の轍を踏むおそれありと警告を発し,次のように書いている.
「国民大衆に向けたイラン大統領アフマディネジャドの感情的煽動的演説は,第二次大戦前の総統ヒトラーの演説を髣髴させる.
 ヒトラーは抑圧されたドイツの大衆を前に,数時間の演説をぶち,世界に挑戦状を突きつけ,ヨーロッパ侵攻の脅しをかけ,ユダヤ人のゲットー化,焼却炉送りを約束した.ドイツの国民大衆は彼のスローガンをおうむ返しに唱えた.
 これは,独裁政治の力で押しつけらたわけだが,それがどうなったか.第三帝国は崩壊,ドイツは潰滅状態になった揚句,二つに分断されたのであった.
 今日イランでは,同じドラマが繰り返されつつある.核兵器と核エネルギーの取得(のみで),脅威になるわけではない.ヨーロッパ数ヶ国,ロシアそしてイスラエルの例にみられる通りである.
 世界が恐れるのは,この種兵器が,違憲の非民主的独裁者の手に渡ることである.

 物事が指導者の気分次第で動き,或いは支配者の白昼夢に左右されたり,聖職者のファトワで決まるような国家.そしてその対極にある,しっかりした民主体制の法治国家.核兵器が後者の手にある時,世界は騒ぎたてない.
 イスラエルの核問題が云々されても,世界が騒がないのは,そのためである.
 しかし北朝鮮とイランがこの危ない兵器を手にするとなれば,話は別で大騒ぎになる.凶器と化して第三次世界大戦を誘発しかねない.
 イラン共和国は精神的最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイのだすファトワで,国家意志が決まる国柄であり,北朝鮮の場合も,独裁者の白昼夢に基いて国家の方針が決まる体制であるからだ….
 イラン国民は,アラブ側指導者達がこれまで犯してきた数々の過ちを,教訓としなければならない.
 この指導者達は感情に流され,大言壮語して自国民をかりたて,無謀な戦争をやっては敗北し,国民は塗炭の苦しみを味わった.自殺行為≠フ決定に大衆を動員し,その大衆は熱にうかされて指導者の政治的℃ゥ殺行為に従った.
 結果は見るも無惨な破壊と人命損失.それは子供達の未来まで奪ってしまったのである」※1.

 アル・ナブルシは,「シーア派の核爆弾―これが待ち望んだマフディーか」と題する二本目の記事で,次のように書いた.
「イランの未来型爆弾は,シーア派爆弾,即ち(シーア派が待ち望む)マフディーの伝説的パワーの代用品≠ナある.
 マフディーは登場の暁,丸々400年(1517−1918)続いたスンニ派オスマン(トルコ)帝国の覇権の如く,武力を以てアジア,イスラム及びアラブ世界をシーア派ペルシャ帝国の足下に跪かせる.核はそれを可能にする.
 つまりは待望久しいマフディーの代用品である…」※2.

 アル・ナブルシは,三本目の記事で,アル・カイーダと核武装に走るイランの間には,目的,手段,手口,欧米に対する態度のうえで,類似点が10あるとして,それを指摘した後,次のように結んでいる.
「核武装に狂奔するイランの脅威は,アル・カイーダの比ではない.ずっと大きい.
 核のうえに強力な軍隊と治安機関を有し,経済手段も強大である.そのうえに有力な援軍がいる.ヒズボラ,ムスリム同胞団,ハマス運動,シリアと自白押しである」※3.

   2.イランの核はこの地域の軍拡競争を誘発する―アル・アハラム

 エジプトの半官紙Al-Ahramは社説で「世界がイランの発表にきちんと対応しなければ,核武装競争を誘発してしまう」と警告を発し,次のように主張した.
「イランの核能力取得に対して,国際社会とアメリカが是認するような態度を示せば,この地域所在諸国に,誤まったメッセージを伝えることになりかねない.
 イランの経験で拍車がかかり,この地域の多くの国が核開発に乗りだすだろう.
 核能力を持てば,この地域だけでなく国際社会でも立場が強まる.
 それだけではない.イランの核開発で地域の軍事バランスが必然的に崩れてしまう.
 この地域でイランが他国とどのような関係にあるかを考えれば,バランス崩壊の意味するところは大きい.…」※4.

   3.どの国も核の軍事用開発は不可―エジプト外相

 訪日したエジプト外相アブルゲイト(Ahmad Abu Al-Gheit)は,東京における記者会見でイランの核開発問題に触れ,イランは核エネルギーの平和利用の権利を持つとしながらも,エジプトは中東の核兵器に反対すると主張し,次のように述べた※5.
「我々は中東への核兵器導入に反対する.イランはNPT(核拡散防止条約)の調印国である….調印国は(核エネルギーの平和的)利用の権利がある…
 重要なのは,イスラエルであろうがイランであろうが,どの国も核の軍事用開発をしてはならぬということである」.

   4.イランの核はアラブの脅威―アル・アラビアTV局長

 アル・アラビアTV局長でロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatの前編集長アル・ラシド(Abd Al-Rahman Al-Rashed)は,「我々がイランを恐れる理由」と題し,同紙に次の署名入り記事を書いた.
「イランの核兵器に狙われるのは湾岸諸国だけのようである.これがアラブ世界に分裂をひきおこす※6.
 イランがシリアに投下することは考えられない.ヨルダンやエジプトをターゲットにするとも思えない…
 イランがイスラエル使用するのも考えられない.イスラエルはミサイル防衛システムを有し,強大な火力も持つうえに,イランの都市全部を潰滅させるだけの核戦力を持っているからである.
 更に,イスラエルに対する核攻撃は,即パレスチナ人地区の大規模破壊を意味する…
 つまりこの大量破壊兵器が使われるとすれば,ターゲットの選択肢はアラブ湾岸(諸国)だけということである…」.
「恐怖がこの地域を軍拡競争につき落す.この地域の誰のためにもならない.
 これで得をするのは欧米,とりわけロシアの武器商人だけである」※7.

   5.脅威を受けるのはアラブ湾岸域―沈黙するな

 カタールの改革派知識人でカタール大前シャリーア・イスラム法学部長アル・アンサリ(Dr.Abd Al-Hamid Al-Ansari)は,カタール紙Al-Rayaに湾岸地域は大きな危機下にあるとし,次のように書いている.
「世界は,特に超大国はイラン(の脅威)問題で躍起になっているが…湾岸地域は一見したところ平穏で,こちらには何の関係もないかのようである.
 しかし,この地域は…非常な危機下にあるのだ…
 それにも拘わらず,我々は指一本あげようとしない.
 イランの主張(平和目的だけのウラン濃縮)を額面通りうけとる者は,誰もいない.
 イラン随一の盟友で,核(開発)を支援しているロシアも,平和利用のみなどとは信じていない….
 ムスリム・イランの(核)プラント,特にブシェールは,距離からいえばテヘランより我方の国々に近いのであるが,我々には安全を求める権利がある.
 イランは,放射能漏れの防止を保証できるのか,人為的ミスや技術上の欠陥,誤まりによる漏れはない,と誓えるのか.
 事故があってからは遅いのである.地域全体が地獄と化す….

 一体何の罰で,我々の子供や孫がイランの問題でおびえながら生きなければならないのだろう…
 イランは依然としてアラブ首長国連邦の島嶼を占領したままであり,この地域のすべての国と問題をかかえている.このようなイランに平静でいられようか…」.

 アル・アンサリは,イランの脅威に対して沈黙する湾岸諸国の指導者達も槍玉にあげ,次のように批判した.
「我々の指導者達は一堂に会して,ムバラクがやったように,テヘランに対する明確且つ断固たる声明を何故だせないのだろうか.
 問題を直視せず,いつまであらぬ方を向いているのか.いつまで追従を続けるのか….我々の安全を保障するアメリカ以外に,誰が湾岸域を防衛し,守ってくれるのか.
 我々が安全保障者として(アメリカを)考えても,一体誰がそれを非難できようか…」※8.

   6.イランの核開発は,深刻な環境破壊の危険性あり

 サウジの半官紙Al-Watanは,社説でイランの核開発がもたらす危険性は,軍事用核開発もさることながら,放射能漏れによる環境破壊の方が,まず第一に憂慮されるとし,次のように論じた.
「イランの核開発で心配なのは,放射能漏れによる環境破壊である.湾岸域全体が汚染される可能性がある.
 何故それが心配であるかといえば,イランがロシアの核技術に依存しているからである.ロシアの核技術は信頼性が低く,安全性に問題がある.
 広範囲に放射能汚染をひきおこしたチェルノブィル事故の後だけに,余計心配なのである…」※9.

 クウェートの改革派知識人でクウェート大学政治学講師アル・バグダディ(Dr.Ahmad Al-Baghdadi)は,同じく環境破壊の面から首長国連邦紙Al-Ittihadで次のように論じた.
「旧ソ連時代チェルノブィル事故は大きな災害をひきおこした.
 イランは,そのような事故をおこさぬ技術能力を持っているのか.
 思慮分別のある人からみれば,イランの技術的後進性は明らかであるが,イランはそれを認めようとしないだろう.
 更に,プラントのひとつから放射能漏れがあっても,汚染危険を認めず外部に知らせることもないだろう.
 近い将来追加プラントの建設を予定しているから,危険性を自分から口にすることはなお更あり得ない.
 湾岸地域からみれば,汚染と生態系破壊の危険は益々強まるわけである」.

 アル・バクダディは,イランの専門家がビン・ラーデンやアル・ザルカウィ等のテロリストに核技術を売る可能もあると憂慮し,イランは,湾岸諸国が当然抱く懸念を全く考慮せず,自分のことしか考えていないとし,放射能漏出処置能力にも欠けると指摘,次のように書いた.
「イランのこのような破壊的冒険主義は阻止しなければならない…
 イランは技術能力がだいぶ低い国である.この国の無謀と傲慢のつけは,結局は湾岸地域の住民が払わされることになる.住民は代々後遺症に苦しみ,汚染地域の土地利用や資源開発もできなくなる.
 それは,イランが思慮深く行動するなら,いや力づくでもイランに思慮深く行動させるなら,防止することができるのである」※10.

   7.イランは核で子供の火遊びをしている

 エジプトの改革派知識人で元アル・アズハル大講師のマンスール(Dr.Ahmad Subhi Mansour,反スンニの見解の故に首をきられ,現在アメリカに居住)は,改革派サイトで,核兵器開発に向かうイランの動機について論じた.
 イランは誰からも脅威をうけておらず,領土が占領されているわけではない.
 むしろ恐れを抱いているのは湾岸諸国の方である.
 更に,宿敵サッダム・フセインは排除され,アメリカはイラクの問題で足をとられているから,イランの立場は前に比べて強くなっているとしたうえで,アル・マンスールは,次のように書いていた.
「従ってイランは,虎視眈々として狙っている敵から身を守るため,核兵器を持つ必要はない.持つとするなら,大サタンたるアメリカとその西側同盟者と(戦うため)である.
 世界が信仰の家と不信仰の家(こちらはダール・アルハルブ,戦争の家とも呼ばれる)に分けられるからである….
 西側には,イランの核開発を恐れる正当な理由がある.
 西側は,独裁者の精神構造を知っている.イランを勝手気侭に支配する聖職者の精神構造も判っているからである.
 それは,我方の死者は天国に,彼等の死者は地獄に=iという第2代ハリーファのウマル・イブン・ハッターブの言葉)にもとづいて,イラン国民であれ敵側人民であれ,偉大なるジハードのためなら無辜の人間を何百万と殺害しても構わぬ,という精神構造である…※11.

 イランは,カルバラにおけるアル・フサインの死や,バイト・アル・サキファの出来事,そしてスーフィンの戦いに,今でも非常にこだわり続けている.
 一方にアリ・イブン・アブ・ターリブがおり,そのライバル達のアブ・バクール,ウマル,ウスマーンそしてムアーウィヤがいて,そのライバル関係のなかでアブ・ターリブ支援に馳せ参じることが信仰の核心,とされている※12.
 彼等からみると,これがこの宗教の基盤でありこの世界の基盤である.単なる昔の話ではないのである.
 遥か昔の歴史にこだわり,それを現代の宗教,政策,信仰の問題にしてしまう….それに核をからませてくると,
 子供が電線で遊ぶように,事実上核の力をもてあそぶことになる」※13.

U イランの核開発を支持する立場

   1.イランの核はイスラムの名誉を守る

 シリアの国外追放問題担当相シャバン(Buthayna Sha`ban)は,ロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatのコラムに,次のように書いた.
「事情に通じている者なら,イランがやっている仕事は,インド,朝鮮及び中国のような国々が以前にたどった大変な科学,技術段階であることを,理解している.
 それなのにまわりが騒ぎたてるのは,仕事をしているのがムスリム国家だからであり,核技術を確立して,この分野の先進国レベルへ到達する軌道に乗ったからではないか….
 西側諸勢力はムスリムにさまざまな戦いを仕掛けている.
 その戦争のひとつが,思想,科学及び技術の戦いである.意図は知れたこと.ムスリムによる知識と先進技術の取得を阻止することである.アラブを初めとするムスリムの科学,技術の後進性が,ムスリム侮蔑の根底にある.
 ムスリムの聖地を侮蔑し,彼等の土地を占領するのも,科学,技術の後進性を笑いものにするところからきている.ムスリムに対する西側の政策を総括すれば,個人,政権,国家をテロリスト,過激派と一言のもとに切って捨てることにある.
 そしてそれをムスリムの攻撃材料に使い,それを言い掛かりにして科学や知識の取得を阻止し領土占領を続け,資源を略奪し,国際舞台では見下した態度をとるのである.

 イスラムの名誉を守るには,頭を使い論理的思考を駆使し,目的貫徹の姿勢を崩さず,科学上文化上の挑戦をうけて立たねばならない.
 アメリカはイランを挑発の道を歩む(国)と言っている.
 それでいいではないか.これこそアラブ,イスラム諸国があゆまねばならぬ道なのである…」※14.

   2.世界は核問題でイスラエルをわきにおきイランを差別する

 サウジ日刊紙Al-Watanは社説で,イスラエルを国際批判のトップにあげ,(イラン)差別をやめよ,とし,次のように主張した.
「国際社会は,態度を硬化させる前に,イランが何故核開発に取組むのか,その理由を考えるべきである.
 アメリカと国際社会は,差別反対の原則にもとづいて,まずイスラエルを問題のトップに掲げ,その核能力を検証すべきである.
 (イスラエルの核能力に)目をつぶれば,イランは強情になるばかりである.
 これは,この地域とその住民のためにならない」※15.

 ヨルダンのコラムニストであるアル・サファディ(Ali Al-Safadi)は「国際社会はイランとイスラエルのバランスを欠く」と題し,半官紙Al-Dustourに次のように書いた.
「国際社会は,イランに求めていることを,ほかの国特にイスラエルに求めていない.
 西側は,イランの核開発には目の色を変えて反対するのに,イスラエルの核武装を助けた.
 そしてこれが,この地域の平和と安全に対する最大の脅威になっているのである.
 イランに禁じられていることが,何故イスラエルには許されるのか.イスラエルは何故国連安保理の決議をうけないのか.国連協定のチャプターセブンが何故適用されないのか.
 ウラン濃縮禁止と核兵器拡散禁止は,例外なくすべての国に適用され,そして世界のすべての国を拘束する国際法がある時,論理的であると言えるのである…」※16.

 ヨルダンの前宗教相でダァワ・救済のための世界イスラム評議会事務総長兼ヨルダン半官紙Al-Dustour会長のアル・シャリフ(Kamel Al-Sharif)は,イランの核の脅威は想像の産物にすぎないが,イスラエルの核の脅威は本物とし,次のように論じた※17.
「イランの脅威はあくまでも仮定の問題である.脅威であるかも知れない,そうでもないかも知れない.その程度のことである.
 これと対照的にイスラエルの脅威は本物であり,現場に存在する.爆撃,ミサイル,戦車,装甲車,婦女子殺戮等々の形で,我々が日々目にしているのである…」※18.

   3.イランが活動をエスカレートしたのはアメリカのせい

 カタール紙Al-Watanのコラムニストであるハメド(Mazen Hamed)は,イランがミサイルと核兵器の開発に踏みきったのは,アメリカの政策のせいであるとし,次のように主張した.
「アメリカが隣りのイラクとアフガニスタンから砲をつきつけている時,どう対応すべきであろうか.アメリカの海軍が包囲し,空から海から陸から脅威を与えている時,どう対応すべきであろうか.友邦のシリアとレバノンが内外で包囲されている時,どう対応すればよいのであろうか.悪の枢軸≠フ主役に仕立てられた時,イラン国民はどう振舞えばよいのであろうか.軍事施設と核施設が攻撃されるといったニュースを連日読むようになった時,国民はどうすべきか.革命(即ち政権)打倒を煽りたてる計画を日々耳にする時,何をすべきであろうか.
 以上の事実に照らして考えれば,イランが自衛策を講じ,侵攻に備え,これを阻止できる手段を確保するのは,当然である….
 イランは活動をエスカレートし,代償は無視して驚くほど挑発的な態度をとっている.これもアメリカがイラン阻止政策をとり,主人気取りで指図するからである.ミサイルと核開発で(イランが)成果をあげているのも,もとはといえば(アメリカの反イラン)政策継続が背景にある…」※19.

   4.アラブ諸国が核開発をしないのは残念

 ヨルダンの半官紙Al-Dustourのコラムニストであるアル・リンタウィ(Ureib Al-Rintawi)はイランの核開発の成果を讃え,足踏み≠セけで核能力の取得に動こうとしないアラブ諸国を批判し,次のように論じた.
「極めて困難な地域的国際的環境のもとで成果をあげたイランを讃え,指導者とその(背景にある宗教上の)権威に敬意を表明する…
 欠陥だらけの中東の非核化″\想などくそくらえである.この構想は,誰も納得させることができなかった.提唱者や推進者すら半信半疑である.この構想が弱者の立場からだされ,お願いのかたちをとっているからで,強者とその政治,経済,軍事力だけには自由に動ける余地が残されていた….
 しかし,我々(アラブ)はこれからも我々得意の道楽を続けていくだろう.もっとはっきり言うならば,地に足のつかない無鉄砲な計画やスローガンを鵜呑みして,結局はその幻想にうちのめされていくということである.
 我々はこれからも何十年と低迷を続け,足踏み状態にいることであろう.

 イランが完全な核燃料サイクルを保持することによって,この地域で平和的軍事的利用を目的とした核能力を取得しようと猛烈な競争が始まるだろう.
 しかし残念なことに,アラブの一国としてこれに名乗りをあげるところがない…」※20.

※1 2006年5月3日付 Al-Siyassa(クウェート)

※2 2006年4月23日付 
http://www.elaph.com/ElaphWeb/ElaphaWriter/2006/4/143615.htm

※3 2006年5月9日付 Al-Raya(カタール)

※4 2006年4月16日付 Al-Ahram(エジプト)

※5 2006年5月16日付 ロイター

 同17日付Al-Gumhouriyya(エジプト)

※6 2006年10月,アル・ラシドは,「左様,我々はイランのウランを恐れる」と題し,類似の記事を書いた.2003年10月10日付MEMRISD586「イランの核兵器はアラブ,イスラム諸国の脅威」
http://memri.org/bin/articles.cgi?Page=archives&Area=sd&ID=SP58603

※7 2006年4月18日付 Al-SharqAl-Awsat(ロンドン)

※8 2006年4月17日付 Al-Raya

※9 2006年4月21日付 Al-Watan(サウジ)

※10 2006年4月25日付Al-Ittihad(アラブ首長国連邦)

※11 紀元625年ウフードの戦いで,後に第2代ハリーファとなるウマル・イブン・ハッターブが,アブ・スフイヤンの言に応じたもの.「戦いに流れあり.今日はバドルの戦いのやりとり」とある.アブ・スフイヤンは,ムハンマドの軍勢と戦ったマッカ軍の指揮官で,初代ウマイヤ朝ハリーファのムアーウイヤの父.ウフードの戦いははっきりした勝敗がつかなかったが,ムスリム側が苦戦した.

※12 第4代ハリーファのアリー・イブン・アブ・ターリブの息子アル・フサインは,カルバラの戦い(681年)で,第2代ウマイヤ朝ハリーファのムアウイヤに家族諸共殺された.バイト・アル・サキファは,632年にムハンマドが死亡した後アル・マデイナのアル・サキファホールで行われたアブ・バクルに対するムスリム達の忠誠誓約で,アブ・バクルが初代ハリーファとなった.シーア派は,アブ・バクル,第2代ハリーファのウマル,第3代のウスマーンが,アリー・イブン・アブ・ターリブから正統なるハリーファの地位を奪った,と主張する.シーア派は,ムハンマドの死後ターリブが初代ハリーファになるべきであったと言う.

 スーフィンの戦い(657年)は,第4代ハリーファのアリー・ビン・アブ・ターリブ軍と初代ウマイヤ朝ハリーファのムアウイヤ・イブン・アブ・サフィヤン軍との戦闘.

※13 2006年4月12日付 
http://www.metransparent.com/texts/ahmad_sobhi_mansour_text/ahmed_sobhi_mansour_iran.htm

※14 2006年4月17日付 Al-SharqAl-Awsat

※15 2006年4月16日付 Al-Watan

※16 2006年4月16日付 Al-Dustour(ヨルダン)

※17 カメル・アル・シャリフは,1948年の戦争時ムスリム同胞団部隊を指揮してイスラエルと戦った.

※18 2006年4月16日付 Al-Dustour

※19 2006年4月14日付 Al-Watan

※20 2006年4月13日付 Al-Dustour

ハンナ・アブラハム(MEMRIの研究員) in MEMRI, 2006/5/26


 【質問】
 中露欧の,イランの核問題に対する基本的戦略は?

 【回答】
 ソースとするには「?」な部分の記述もあるが,北野幸伯によれば,以下のようであるという.

中国.
 アメリカが中東を支配した日にゃあ,中国はアメリカに逆らえなくなります.(逆らいにくくなります)
 米中戦争が起こっても,中東からの石油がとだえたら戦えない.

 一方のロシア.
 ロシアは,

1,アメリカが攻撃をやめると,イランの石油・ガス・原子力利権が転がりこむ
2,アメリカが攻撃すると原油価格が急騰してもうかる

というどっちに転んでもいい作戦.

 欧州は今回,アメリカにつくことで,利権のおこぼれをもらおうという腹のようです.
(フランスは前回イラクの石油利権を失った)

 というわけで,中ロは,一体化してアメリカのイラン攻撃に反対する意志を確認したのです.

――――――ロシア政治経済ジャーナル No.388,2006/4/11号

 もっとも2010年に入ると,ロシアはイランへの対空ミサイル輸出を延期するなど,スタンスに変化が見られ始めている.


 【質問】
 イラン国内には核開発に反対する声はないのか?

 【回答】
 全くないというわけではない.
 MEMRIソースによれば,反核学生暴動がテヘラン大学で起きたという.
 ただし,報道管制下での限定的な情報であり,また,話を詳しく見てみると,「核開発などに費やす資金があったら,こっちにも回せ」という主旨の暴動であるようだ.

 以下引用.

核はいらない―テヘラン大学で反核学生暴動

 複数のイラン情報筋が,報道の検閲をうけ制約された形ではあるが,この4日間テヘラン大学の数キャンパスで暴動が発生している,と報じた.
 改革派のインターネット新聞Roozによると,500名より成る暴動鎮圧隊がテヘラン大学を包囲しており,暴動学生とバシジ隊及び警察部隊が衝突したという.

 テヘラン大学の学部教員パージに学生達が抗議したのが,暴動の発端である.
 たまたま,この日はペルシア暦のホルダッド月の第二日にあたる.改革派のハタミ(Mohammad Khatami)が初めてイランの大統領に選ばれた日である(1997年5月23日)※1.

 この学生暴動で8名の学生指導者が逮捕され,Roozに引用された複数の目撃者の話によると,キャンパスで篭城中の学生の内25名が負傷した.うち5名は重傷という.
 目撃者達は,学生達が,
「我々は核エネルギーなど欲しくない」,
「パレスチナは忘れろ」,
「国民のことを考えろ」
といった反政府スローガンを叫んでいる,と述べている.

 目撃者達によると,イランの治安部隊は実弾を発射しており,キャンパスの外の住宅にも撃ちこまれている.
 学生のひとりはRoozに
「大学のキャンパスは燃えている.鎮圧隊が襲撃を繰返し,銃声音が轟き…,あちこちに血糊が飛び散っている」
と語った※2.
 大学の電話線はすべて切断されているという.
 別の目撃者達によると,
「警察の暴動鎮圧隊は,ヘルメットをかぶり防盾と棍棒を手にしてキャンパスへ突入し学生達に襲いかかっている.目茶苦茶に殴打され,立てなくなった学生も多い」
という.
 或る大学警備員はRoozのリポーターに,
「学生達を殴打してもよいが,痕跡がついてはいけないので,額面と頭は殴るなと言われた.
 学生に容赦は無用.但し,バシジ学生組合員には手をだすな,と命じられた」
と語った.
 学生のひとりは,
「暴動鎮圧部隊を次々と送りこんでいる.ざっとかぞえても,3,000人はいる.車両やオートバイに乗ったアンサル・ヒズブラ隊も沢山いる.消防の放水車(学生を散らすため)もキャンパスに配置された…」
と言った※3.
 リポーターのひとりは,
「取材に来た報道関係者達は警備隊員に校門のところで阻止され,(キャンパスに)はいれない」
と報じている※4.

 現地の警察は,暴動に関与した学生は100人足らずと主張している.
 しかし,Roozの取材した複数の目撃者によると,中心のキャンパスでは学生4,000人のうち3,000人ほどが暴動に加わっており,法学・政治学部のキャンパスでは2,000人が関与しているという※5.
 最高指導者ハメネイ師に近い超保守系新聞Kayhanは,学生指導者達を「(アメリカ)議会のテヘラン大学駐在員」と呼び,
「昨日午後,教員数名が辞職させられた後,非合法集団が教室でデモをやった」
と報じた.
 Kayhanによると,デモの首謀者は学生ではなく,学外から来た者であるという※6.
 テヘラン首都警察長官タライ(Morteza Talai)はイラン学生通信(ISNA)に対し,
「午後9時30分,学生100名が校門付近に集まり,2-30名の学生が付近の人家に投石を始めた.火炎瓶も投げている」,
「警察は抑制した行動に終始した.そして翌午前5時30分まで,火炎瓶を投げるデモ隊に対し,制止行動をとった.しかし,警告に従わなかったので,朝になって警察はキャンパスに突入し,午前7時までに逮捕し,キャンパスを解放,市の派遣隊の協力を得て後片付けを終えた…
 この間3人の学生が学生寮の屋根にのぼろうとして負傷した」
と語った.

※1 ホルダッドの第二日≠ヘ,イランの改革運動の名前になった.近年保守派からひどい弾圧をうけ,今日では政界代表が全くいない状態になっている.

※2 2006年5月25日付 Rooz

 http://r0ozonline.com/01newsstory/015805.shtml

※3 同上

※4 同上

※5 2006年5月25日付 ISNA

http://www.isna.ir/Main/NewsView.aspx?ID=News-723636&Lang=P

2006年5月25日付 Rooz

※6 2006年5月25日付 Kayhan

http://www.kayhannews.ir/850304/2.HTM#other207

※7 2006年5月23日付 IranFocus(写真)

http://www.iranfocus.com/modules/news/article.php?storyid=7312

MEMRI, 2006/5/27


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