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◆◆◆湾岸戦争後の武装解除問題
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中近東FAQ目次


 【link】

『灰の中から』(パトリック・コバーン著,緑風出版,2008/05)

 著者のパトリック・コバーンは,英誌「インディペンデント」の記者.
 湾岸戦争時からバグダットに住んで記事を送ってる.

 本書は,経済制裁下のフセイン政権と,イラク市民の生活を描いたドキュメント.

 バグダットの古本屋街はフセイン時代,地下出版の根城で,何度も当局の手入れを受けてる.
 もちろん,性的ではなく政的な意味で.

 占領統治時代もテロが活発で,出版・流通も麻痺してる.
 コバーンの著作が読みたきゃ,海賊版しかない状態.
 その海賊版も,エジプトからの輸入品.

 まあ,バグダットにも神保町みたいな町と,おまいらみたいな奴がいるって事で.

-------------軍事板,2012/02/09(木)
青文字:加筆改修部分

 【珍説】
 アメリカ主導の経済制裁で数十万人のイラク人が死んでる.これは許されてはならないことだ.

 【事実】
 独立国を侵略して大規模な環境破壊(油田火災,原油流出)を招いておきながら,のうのうと最高指導者がその座に居座っているんだから,何らかの制裁を与えられて当たり前.
 それに対イラク経済制裁は,国際連合の決議で決まっていること.
 それに対して異を唱えるなら,国際政治を否定していることになる.

 また,経済制裁で医薬品の不足を招き,赤ん坊が死んでいると,アメリカを非難する人々は,赤ん坊が死んでいるのを横目に,軍事力増強に邁進するイラク政府を非難することがないのも,非常に不可解と言わざるを得ない.

 さらにフセイン自身は,イラクの飢えた子供の救済に使われるとされていた「食料のための石油輸出計画」を悪用,私腹を肥やしていたことが明るみになりつつある.赤ん坊を飢え死にさせておいて私腹を肥やしている独裁者こそ,まず最初に非難されるべきではないのか?


 【質問】
 モサドによって暗殺されたと言われている,カナダ人の弾道学者ジェラルド・ブルのスーパーガン構想とは,どのようなものだったのですか?

 【回答】
 多薬室砲もしくはムカデ砲と呼ばれるもの.
 枝のように突き出した多数の薬室で火薬を順次爆発させて,長大な砲身から砲弾を撃ち出す.

 メリットは
1)砲弾の初速を早くできるので長大な射程が得られる.
2)砲身内の圧力が通常の火砲に比べると低いので砲身と砲弾の強度が高くなくても済む.

 デメリットは
1)構造が巨大になるので移動が困難というか不可能.
2)命中精度が低い.

 同じものを,ドイツ軍がV3号という名称で第二次世界大戦に製造した.これはドーバー海峡を越えた英本土砲撃用だった.

スーパー・ガン
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 サダム・フセインは9.11テロについて,どのようなコメントをしたのか?

 【回答】
 駐日アメリカ大使館の指摘するところによれば,以下の通り.

――――――
「(9月11日テロ事件の)真の犯人は,崩壊した建物の中にいる」   アリフ・バ紙,2002年9月11日 (国営紙)

 「(9月11日テロ事件は,)神の懲罰である」   アルイクティサディ紙,2002年9月11日 (国営紙)

「9月11日の同時テロが3000人の命を奪ったならば,50州の100都市がニューヨークおよびワシントンと同様に攻撃された場合の損害はどの程度だろうか? 何百機もの飛行機が米国各地の都市を攻撃したらどうなるだろうか?」   アルラフィダイン紙,2002年9月11日 (国営紙)

「米国は自らを燃やし,今世界を燃やそうとしているというのが,(9月11日テロ事件の]単純な真実である」   アリフ・バ誌,2002年9月11日 (国営誌)

「人間の手に収まるような小さな缶で,すべてに影響を及ぼすウイルスをまくことのできる生物兵器を使用することも可能である」  バビル紙,2001年9月20日 (国営紙)

「米国は自らの毒を味わわなければならない・・・」  バビル紙,2001年10月8日 (国営紙)
――――――

 アメリカが湾岸戦争後も依然イラクを脅威と見ていたところへもってきて,こうした発言をサダムが繰り返せば,どういう結果をもたらすかは火を見るより明らかだと思われるのだが…….
 当時,サダムの周囲には既にイエスマンしかいなかっただろうことが窺える.


◆◆◆◆ORF疑惑


 【質問】
 イラクの飢えた子供の救済に使われるとされていた「食料のための石油輸出計画」で,どんな不正が行われたか?

 【回答】
 フセインは,石油なしではやっていけない世界の国々の弱みにつけ込み,湾岸戦争後に科された経済制裁をかいくぐり,賄賂資金数十億ドルを得た.
 それをもって政権基盤を強化し,各国政治家などへの買収工作を行ったたとされる.

Iraq's Black Gold
フセインを太らせた黒い金脈
 ロシア人実業家のガジ・ルグエフは,ウダイ・フセインと初めて会ったときのことを鮮明に記憶している.
 イラクのサダム・フセイン大統領の長男ウダイが,バグダッドでルグエフと会ってくれることになったのは,昨年前半のこと.儲かるビジネスの話があるという.
 当初,ルグエフは警戒した.ウダイの冷酷さを聞いていたからだ.試合に負けたサッカー選手を拷問したとか,気晴らしに女性をレイプしたといった噂をルグエフは耳にしていた.
 午前3時にウダイの宮殿で会おうというのも,妙な話だった.
 だがルグエフは,金儲けのチャンスを捨てるような男ではなかった.モスクワではウオツカの瓶詰め工場を経営し,荒っぽい酒のビジネスで成功した.犯罪組織に牛耳られていたモスクワの食料市場の運営に手を貸したこともある.
 ウダイは宮殿を訪れたルグエフを歓迎し,高級車や珍しいコニャックのコレクションを披露.その後で,金儲けの話になった.
 イラク政府は,原油を市場価格を下回る値段でルグエフに提供する用意がある.その原油を買値以上の値段で大手石油会社に売れば,利ざやを稼げるというわけだ.

欧米諸国は見て見ぬふり

 しかも,この取引に違法な点はない.国連の「食料のための石油輸出計画」に基づく契約になるからだ.食料と医薬品を購入するための原油輸出は許されている.
 ルグエフが払う原油の代金は国連管理下の銀行口座に蓄えられ,イラクの飢えた子供の救済に使われることになる.「子供達を救わなくては」と,ウダイは作り笑いを浮かべて語ったという.
 もちろん,この取引には裏があった.フセイン父子に利益の分け前を提供する必要があるのだ.
 イラク政府当局者はルグエフに,ヨルダンにある秘密の銀行口座に原油出荷手数料として6万ドルを送金するよう要求.イラクから原油を購入する場合は,誰でも売買契約1件ごとに同様の手数料を払うことになっている.
「それが,われわれのやり方だ」
と,イラク当局者は言った.そこでルグエフは6万ドルを送金し,連絡を待った.
 だが,出荷の通知は来なかった.ルグエフによれば,イラク当局者は最初,彼の分の出荷が遅れていると言った.ルグエフが苦情を申し立てると,イラク政府は契約を破棄.しかも,6万ドルの返却に応じなかった.
 ルグエフは激怒した.
「連中は,なんでも望みどおりになると考えているんだろう」 
 彼は仕返しをしようと決断.自分がかかわったイラクの悪事を暴くことにした.
 ルグエフは10月,国連に正式な書面を提出した.本誌が入手したその文書には,イラクとのヤミ取引が詳しく記されている.

 ルグエフの訴えは,フセインが石油を利用して悪事を働いているのではないかという疑惑を初めて公のものにした.フセインは,石油なしではやっていけない世界の国々の弱みにつけ込んで,湾岸戦争後に科された経済制裁をかいくぐり,政権基盤を強化したらしい.
 イラク側は,ルグエフの主張は「誤り」だと主張.ただし,6万ドルの返却には応じるという.
 現在,この疑惑を調査している国連職員は,ルグエフの告発に驚かなかったはずだ.フセインが「食料のための石油輸出計画」を悪用して不正な金を得ていたことは,何年も前から公然の秘密だった.CIA(Central Intelligence Agency:米中央情報局)は,この金が兵器開発に使われたとみている.
 米政府によると,97年以来イラクが原油輸出契約にからむリベートとして受け取った金は推定23億ドル以上にのぼる.だが,疑惑を立証することはむずかしく,これまでフセインを密告するほど向こう見ずな人物はいなかった.
 欧米諸国は,この件について見て見ぬふりをしていたようだ.その理由の一つとして,イラクの原油輸出が原油価格の安定に役立つという点があげられる.

原油埋蔵量は世界2位

 だが,このまま知らん顔を続けることはできない.国連における対イラク決議案をめぐる論争でも,世界第2の埋蔵量を誇るイラクの原油は重要な問題になっている.
 アラブ諸国だけでなく,アメリカの同盟国の一部は,アメリカのフセイン打倒の目的はイラクの豊富な原油を支配することだと信じている.とくに,石油ビジネスでイラクと良好な関係にあるロシアとフランスは,アメリカ主導のイラク攻撃に批判的だ.
 だが,米ブッシュ政権の支持者のなかには,ルグエフの告発どおりフセインが国連の制裁を無視しているなら,不正な資金入手と大量破壊兵器の開発を止めるには戦争しかないと主張する人もいる.
 「国連は,腐敗と無能という二つの理由でこの問題を解決できないだろう」と,米国防総省の対イラク政策顧問リチャード・パールは言う.
 フセインも,原油輸出による不正な資金入手が「アメリカの侵略行為の犠牲者」を装う自らの努力にはマイナスになると悟ったようだ.イラク攻撃開始の機運が高まった9月,イラクはリベートの要求をぴたりとやめている.
 フセインは,どのような経緯でリベートを得られるようになったのか.「食料のための石油輸出計画」が始まったのは96年.当時,湾岸戦争後の厳しい経済制裁がイラク国民に耐乏生活を強いるようになっていた.多くの人々が栄養失調に苦しみ,医薬品は不足していた.
 国連の「石油輸出計画」はフセインの私腹を肥やすことなく,イラク国民の危機を救う方法になるはずだった.イラクは国連の特別委員会の監視下で,半年ごとに20億ドル相当の原油輸出を許された.
 原油輸出で得た利益で食料などを購入する場合は,国連の承認が必要だ.購入した食料や物資は,検査を受けなければ国内に持ち込めなかった.
 だが国連の計画には,欠点があった.その一つが,フセインが原油の売却先を選べたことだ.当然ながらフセインは,原油1バレル当たり30〜50セントのリベートを払うことに同意した企業を優遇した.
 リベートは,現金とはかぎらない.契約の獲得をねらっていたある企業は,44万ドルのロールスロイスと特大のダイヤモンドをフセインの長男ウダイに贈った.
 「食料のための石油輸出計画」の欠点はもう一つある.国連はフセインに,市場価格より安く原油を売るよう命じた.人道支援を目的とする計画から,フセインが不当な利益を得るのを防ぐためだ.
 だが,これが意図とは正反対の結果を招いた.あまりに価格が安いため,イラクとの取引をねらう企業からすれば,リベートを払っても十分に利益が出る.イラクの原油が市場価格と同じなら,買い手もフセインのリベート要求を相手にしなかっただろう.
 その後,国連はイラクの原油輸出枠を徐々に拡大し,ついには制限を撤廃した.アメリカの統計によれば,フセインは96年以降,「石油輸出計画」を通じて500億ドル相当以上の原油を輸出.その利益で,約250億ドル相当の食料や物資を購入した.
 同時期に,イラクの石油利権をねらう企業がスイスやリヒテンシュタインに何十社も設立された.これらの国の銀行は秘密厳守がモットーなので,取引の背後にいる人物や資金の流れを突き止めるのがむずかしい.

軍事関連装置も密輸?

 アメリカの石油会社は,フセインへのリベートは拒否した.その代わり,ルグエフのようなブローカーを通して原油を買い入れ,彼らにリベートを支払わせた.
 リヒテンシュタインだけでも10社ほどの企業が設立され,推定10億ドル程度の取引を行っている.だが最近,この問題に神経をとがらせる当局が,イラクとの取引を停止するよう企業に命じた.
 フセインが「石油輸出計画」によって得たのはリベートだけではないらしい.国連職員によれば,フセインはこの計画を利用し,工業・軍事関連の装置の密輸入を行った可能性がある.
 「(食料のための石油輸出)計画により莫大な量の物資がイラクに渡った」と,ある国連職員は語る.「荷物の中身がすべて申請どおりかどうか,確信がもてない」
 国連職員がフセインの策略を知らなかったわけではない.「石油取引で,イラクがリベートを要求していたことなど前からわかっていた」と,ある職員は明言する.
 だが彼らによると,それを阻止しようという国は,なかなか現れなかった.
 イラクが国連の兵器査察団を国外追放した98年,アメリカは国連に対し,イラクの原油価格を市場水準に合わせるよう説得を試みた.だが,安保理のメンバーの賛同を得られなかった.

イラク原油の大きな魔力

 「フランスやロシアなど一部の国は,イラクの石油の権益と強く結びついている」と,ある国連職員は言う.
 安価な石油の恩恵を受けているのは,フランスとロシアだけではなかった.イラクが日々輸出する原油の30〜50%はアメリカ向けだ.これはアメリカ国内の石油消費量の約8%にあたる.
 ビル・クリントン前米大統領はフセインの不正をほとんど放置した.ブッシュ政権も当初は問題視していなかったが,昨年の同時多発テロ後にイラク攻撃を唱えるようになってから,態度を変えた.
 今年に入り,アメリカは国連を説き伏せ,イラク産原油の価格設定方法を変更させることに成功した.今後,イラクが取引相手からリベートを求めることはむずかしくなるはずだ.
 だが,すでにフセインは,銀行に莫大な資金をため込んでいるはずだ.当分,金に困ることはないだろう.

マーク・ホーゼンボール from "Newsweek"

Hussein's Regime Skimmed Billions From Aid Program
サダムは国連の「オイル・フォー・フード」計画を悪用して数十億ドルの賄賂取得

 NYTの独自取材記事らしもので,悪名高い国連の「オイル・フォー・フード」計画を悪用してサダムが10%(以上)のサーチャージをせしめていたらすい,というもの.
 この国連計画は杜撰で(あるいは意図的に抜け穴が準備されていたので)WSJが書いていたような各国要人への賄賂に利用されていたが,サダムのポケットマネーの製造にも使われたことになる.

 このNYT記事の根拠はイラク暫定政権から入手した石油取引の会計記録だと書いている.
 記事はたいへん詳しい(5ページある!)もの.改めて国連の「人道支援」のいい加減さというか,伏魔殿ぶりがわかる.

http://www.nytimes.com/2004/02/29/international/middleeast/29FOOD.html?pagewanted=1&hp

(極東ニュース板)

Volcker's U.N. Cleanup
ボルカー前ERB議長による,国連の大掃除

 国連のオイル・フォー・フード・スキャンダルの解明のために,ボルカー前FRB議長が任命されたわけだが,コフィ・アナン国連事務総長がボルカーに就任以来をしたのは実際には2週間前のことだった.
 何故そんなに時間がかかったのかといえば,調査委員会の捜査に協力を約束させるための国連安全保障委員会の決議を渋る国があったからで,そうしたフレーム・ワークなしに高名なボルカー前議長を担ぎ出しても意味はない,と英米がアナン総長に圧力をかけたからである.

 アナン事務総長は最終的に英米の主張を認めたのだが,ロシアの国連大使はそうした安保理議決に反対しており,
「調査委員会には賛成するが,新たな安保理決議が必要とは思わない」
といっている.
 サダムの石油ビジネスの最良のパートナーの言として,ロシアの言い分は良く理解できる.
 フランスは安保理決議について特に発言していないが,その胸のうちは容易に想像できる.

 フィナンシャルタイムズ記事によれば先週,Shakir al-Khafajiがサダムの石油賄賂を受け取ったことを認めた.彼は前のWMD調査官Scott Ritterに資金援助し,サダム擁護のドキュメンタリーを作らせた.さらに反戦派議員への献金も行っている.
 この繋がりについて,議会での調査委員会の聞き取りが予定されている.

 国連の人道支援プログラムが各国の政治家への賄賂に利用されたのは,国連の歴史を汚す一大事であるし,この事件はサダム拘束後とはいえおろそかに出来ないものである.
 それはイラクの現状を見ても,破産国再建のために国連の果たすべき役割が増大しているからである.
 国連の権威を保つためにも,国連のプログラムの失敗を解明し,大掃除をして内部を清浄にしなければならない.

WSJ

 NYTのWILLIAM SAFIREは,この汚職事件で,特にこの計画の責任者,コフィ・アナンの任命した理事長補佐官のBenon Sevanが賄賂を受け取っていた疑惑について糾弾している.

 WSも2004/3/18の社説において,この汚職と,それにほうかむりしている国連官僚を糾弾している.
 同紙は,イラクで一般の庶民が食料や医薬品の欠乏にあえいでいた時期に,国連の高級官僚のSevanなどがサダムからの石油の賄賂を受け取っていた証拠がイラクで見つかったと書いている.

 曰く,「コフィ・アナンは火曜日に疑惑調査の必要性を認める発言をしているので一歩前進だが,いまだに国連の態度は無責任.
 国連はイラク国民のために各国の議論を集約して決議をきめ,政策を誠実に遂行すべきだが,国連参加国の外交官や国連官僚の為だけの組織になっている,という.
 国連の権威と言うものがあるのであれば,それは効率性,効果性と共に汚職から潔白であることを自ら証明する義務をももつはずだ」云々.


 【質問】
 「イラク石油・食糧交換プログラム」を巡る不正疑惑にコフィ・アナン事務総長は関わっていたか?

 【回答】
 アナンの長男に不正報酬疑惑が浮上している.
 アナン本人にも,汚職の疑惑会社との接点が浮上している.

 勝田誠( from 読売新聞,2004/12/1)によれば,長男コジョ・アナン氏が,国連の指名で対イラク輸出入物資の船舶検査を担当していたスイスのコテクナ社から不透明な報酬を受け取っていた問題が浮上,コジョ氏が不正に関与していたのではないかとの疑惑が広がっている,という.
 以下,同記事より引用.

 国連事務局はこれまで,同社が国連と契約を結んだ直後の1999年にコジョ氏は同社を辞任しており,「疑惑とは無関係」と主張してきた.
 しかし,今回,コジョ氏が同社から今年2月まで計12万5000ドル(約1300万円)のコンサルタント料を受け取っていた事実が発覚.国連側の主張が覆された.
 アナン事務総長は
「独立した事業家である息子個人の問題」
としているが,米メディアは事務総長の引責辞任を要求するなど不信を強めている.

 また,アナン自身,スイス系企業の幹部と3度にわたり面談している.
 以下,引用.

アナン事務総長,イラク食糧支援汚職の疑惑会社との接点浮上

 国連のアナン事務総長が,長男コジョ氏(31)が不明朗な報酬を受け取っていたことが明らかになっている
スイス系企業幹部と3度にわたり面談していたと,23日付英有力紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が報じた.
 国連報道官も面談の事実を認めた.
 この企業はイラクへの人道支援事業「石油と食料交換プログラム」に絡む不正疑惑で,国連の独立調査委員会(委員長,ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)の調査対象となっている.
 アナン氏と疑惑の会社との接点が初めて浮上したことで,アナン氏が窮地に追い込まれる可能性が出てきた.

 フィナンシャル・タイムズがイタリア経済紙との合同調査結果として報じたところでは,アナン氏は妻とともに97年1月,コジョ氏が当時勤めていたスイス系企業「コテクナ」(ジュネーブ)の会長,社長夫妻と,世界経済フォーラムが開かれていたスイス・ダボスのホテルでお茶を飲んだ.
 続いてアナン氏は98年9月,国連本部で同社社長と面談した.
 その3カ月後,同社は国連の「石油と食料交換プログラム」で,イラク国民への食料や医薬品などの移送状況を確認する業務を委託された.
 さらに同社社長は,99年1月,同社と国連の疑惑が報じられた後,ジュネーブでアナン氏にわびたという.
 これについて国連報道官は「面談はコテクナの契約とは関係ない」と語った.

 一方,同紙はコジョ氏が98年まで正社員として勤めた同社を退社後も,99年1月から04年2月まで,月額2500ドルずつ計17万5000ドルを得るなど,コジョ氏に渡った報酬はこれまで指摘されていた金額の2倍にあたる30万ドル以上になると指摘した.
 国連の独立調査委は29日に2回目の調査報告書を公表する予定で,同紙の報道内容も含まれるとみられる.

(毎日新聞,2005/3/24)

 なお,アナン自身は以下のように反論している.

 国連で14日行われたセミナーでは,旧フセイン政権が不正に得た資金の大半は人道支援事業を通じたものではなく,石油の密輸による収入だったと指摘.
 その上で
「米国と英国は密輸の監視役だった」
と述べ,両国政府にも責任があることを強調した.
 事務総長が特定の国を名指しで批判するのは異例のことだ.

(読売新聞,2005/4/16)


 【質問】
 石油食糧交換プログラムの不正により,フセイン政権はどれほどの資金を獲得したのか?

 【回答】
 米国議会の下院国際関係委員会公聴会では,2百億ドル近くとする見解が示されている.

 同公聴会は「石油食糧交換プログラム=資金追跡」と題され,同委員会のヘンリー・ハイド委員長(共和党)が
「フセイン政権が一九九六年から二〇〇三年まで同プログラムを悪用し,石油を不正に売った資金で軍備増強を図るとともに国連安全保障理事会の常任理事国のフランス,ロシア,中国などの政治家,官僚を買収し,イラク制裁の骨抜き工作や米英両国による軍事圧力への妨害工作を展開した」
と述べる一方,同プログラム悪用を中心とする石油がらみの工作でフセイン政権が得た不正資金の総額はこれまで約百十億ドルとされていたが,実際には二百億ドル近い,と証言している.

 公聴会ではイラクの大量破壊兵器開発についての米国政府による特別調査を実施した中央情報局(CIA)のチャールズ・ドルファー調査官が証言し,フセイン政権が同プログラムを利用し,国連やロシア,フランスの要人を味方につけようとする政治工作を進めたメカニズムを説明,とくに
「フセイン大統領が九八年に長距離弾道ミサイル開発計画を再開したのは同プログラムから巨額の資金が入ったためだった」
と報告した.

(古森義久 from 産経新聞,2004/11/19)

 米国議会が十五日に開いた公聴会では,米国政府のフアンカルロス・ザラテ財務次官補が,フセイン政権が石油食糧交換プログラムから得て海外各国に隠した不正資金の追及状況について,フセイン政権への米英軍の攻撃が始まった昨年三月からの調査で,四十一カ国五百七十口座に総計二十七億ドルの資金があることを発見したと証言している.

 証言によると,これら資金はフセイン元大統領の家族親類,知人,部下などの名義の口座にひそかに預けられ,うち日本では今年六月のイラク主権回復までに合計九千八百十万ドルが押収されて,イラクの国家資産として暫定政府に還元されたという.

(古森義久 from 産経新聞,2004/11/17)


 【質問】
 朴東宣(パク・ドンソン)とはどんな人物か?

 【回答】
 1970年代に米議会で繰り広げられた不法ロビー活動事件「コリアゲート」の主役といわれる人物.
 2006/1/6,国連の対イラク石油・食糧計画不正事件に関連し,FBIによって逮捕された.
 以下引用.

韓国人ロビイスト,米FBIに逮捕

 1970年代に米議会で繰り広げられた不法ロビー活動事件「コリアゲート」の主役といわれる朴東宣(パク・ドンソン)氏(71)が,6日に国連の対イラク石油・食糧計画不正事件に関連して米ヒューストンで米連邦捜査局(FBI)によって逮捕された.
 朴氏は国連の制裁を受けたサダム・フセイン政権下のイラクが条件付きで石油を輸出できるようにする国連の石油・食糧計画成功のため,1992年頃からイラクのために活動た.朴氏は200万ドル以上をイラクから受け取り,国連上層部に不法ロビー活動をした疑いなどで昨年4月起訴,指名手配されていた.
 だが朴氏の側近の1人は,朴氏が米ヒューストンではなくメキシコで検挙されたと語っており,朴氏がメキシコで逮捕された後にある特別な手続きを経て米に身柄が移送された可能性を示唆した.
 ニューヨークタイムズは,朴氏の検挙事実を発表したニューヨーク・マンハッタン検事のマイケル・ガルシア氏が朴氏の逮捕経緯について明らかにしていないと報じた.
 同紙は朴氏が合法的に登録していない状態で外国の代理人として活動し,電信詐欺及び資金洗浄陰謀容疑を受けていると伝えている.
 朴氏は9日ヒューストンの連邦判事から令状実質審査を受ける予定だ.
 朴氏はイラクから少なくとも200万ドルをロビー資金として受け取り,国連上層部「管理」に一部使用,相当量の現金は外交行嚢(がいこうこうのう=外交パウチ,外交文書を送る特殊な封印袋)でニューヨークに移されたことが分かっている.

朝鮮日報 2006/01/09/12:37

 ロイター通信が検察当局の話として伝えたところによると,朴容疑者はイラク系米国人のビジネスマンと共謀し,本来なら国連の経済制裁下で石油を輸出できなかった旧政権の石油輸出の手助けを図ったという.
 朴容疑者は,旧政権から少なくとも200万ドル(約2億3000万円)を受け取ったとして昨年,告発されていた.
 朴容疑者は,北朝鮮問題を担当していたモーリス・ストロング国連事務総長特使との密接な関係も指摘され,同特使はこれが原因で昨年7月,失職している.

産経新聞(共同通信) 2006/01/07/13:02

 今回の逮捕容疑は,石油・食糧交換計画を進める過程で,朴容疑者が共謀者とともに,旧政権と国連官吏の会合をあっ旋し,見返りを受け取っていたとされるもの.

聯合ニュース 2006/01/07/15:07

 朴容疑者の直接の逮捕容疑は,届け出なしに米国でイラク政府の代理人を務めたことなど.匿名の「国連高官1号」と93年にこの高官のマンハッタンの自宅などで会合を重ねたほか,スイスのジュネーブでこの「高官1号」とイラク政府高官との会合を設定した,とされる.

朝日 2006年01月07日22:37

 米国の韓国大使館関係者は
「朴氏がメキシコでFBIメンバーらに逮捕され,ヒューストンに移されたならば,外国人を第3国で逮捕したもので,主権侵害をめぐる議論がありうる」
と指摘した.

 〔略〕

 朴氏は70年代半ば,朴正煕(パク・ジョンヒ)元政権のため米国の前職・現職議員32人に85万ドルの選挙資金を提供した「コリアゲート」の主役.

南鳧M(ナム・ジョンホ)特派員 from 中央日報 2006.01.08.18:50


 【質問】
 石油食料交換プログラム・スキャンダルに関し,国連に自浄能力は期待できるか?

 【回答】
 期待薄と見られる.
 調査委の実地調査官である3人の内2人が,アナン事務総長の関与への調査が甘すぎるとして抗議辞任
「実地調査でアナン事務総長の関与を示唆する情報を得ても調査委員会に無視された」
という.

 詳しくは反MSMを参照されたし.


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